(9月22日)
「うぅ…ごほっごほっ!」
「頑張って。今、優が好きなもの買いにいってるから」
「静香っ…風邪、移るよ…?近くに寄らない方がいいよぉ…ごほっごほっ!」
「何言ってんのよ。私は一応大人よ?子供の風邪なんか移らないんだから、安心して看病されなさい?」
「…静香…」
「なに…?」
「好き…」
「…甘えちゃって。今だけだぞ…?」
「ただいまー…」
「あ、初芝さんだ。よし!この辺のお医者さん聞いてみるね?明日、朝一で行こ?」
「ありがとう…」
「ふぅ〜…やっぱ全裸は最高!あれ…」
「しぃー!優衣菜が熱出しちゃったの…」
「不甲斐ないです…」
「あらあら。氷枕変えようか?」
「あ、お願い」
「熱、何度?」
「38度8分」
「あ〜…じゃあ苦しいわね…。薬飲んだ?」
「市販のは3時間前に…。解熱剤も飲んだんだけど、やっぱ下がんなくて…」
「お医者さんの薬じゃないとダメか…」
「今は裸じゃなくてもいいよね?優衣菜」
「当たり前でしょ?風邪こじらせないように厚着させて。はい…氷枕、冷たいの」
「ありがとう、彩花…」
「ただいま〜。買ってきたわよ?ロールケーキとプリンでいいかしら?」
「サンキュ!優衣菜、今食べれる?」
「ちょっと無理…かな?ごめん…」
「じゃ、冷やしとこう」
「う〜ん…」
「どうしたの、彩花?」
「ちょっと遠いんだけど…今から病院行く?車で」
「え?だってもう10時過ぎだよ?」
「明日から日曜祝日だから…」
「あ、そうか!しまった…」
「緊急外来だったら、どの区にもあるわ。薬は1日分しか貰えないんだけど」
「へぇ〜…」
「あぁ、そうじゃなくて、母淫がやってる病院」
「ハァっ!?」
「どんだけ!」
「ふふん。何を隠そう母淫の四天王はお医者さんなの。そんなに大きい病院じゃないけど、24時間営業で年中無休よ?」
「すげー…」
「いいわけ?」
「信者だけの特別よ?神奈川なんだけど…優衣菜、頑張れる?今から準備すれば1時前にはつけるわ」
「お、お願い…。頑張る…」
(車)
「初芝さん、運転大丈夫?疲れてない?」
「全然平気よ。ありがと」
「誰か交代できればいいんだけど、免許が…」
「貴女達は優衣菜を看てあげてて。優衣菜、ラジオつけて平気?」
「うん…」
「熱もっかい計ろうか?」
「静香の膝まくらぁ…。えへへ…」
「元気そうだな」
「しばらくの辛抱よ?頑張りなさい、優衣菜」
「彩花?その四天王のお医者さんって、今いるの?」
「さっき電話したら、残業しながら待っててくれてるって」
「四天王って、マディソン以外は初めて逢うわね?あ、和奏もか」
「ぶたさんぶーぶー…」
「白庭亜希子。私より年上よ?医師としての情熱も、レズとしての情熱も凄い人よ?下劣だけど」
「下劣?」
「…ま、逢えば解るわ」
「凄いよねー…彩花ってお医者さんとも友達なんて」
「彩花自体は、学歴なんかないくせにねぇ?」
「あ、彩花携帯鳴ってる」
「メールよ。多分亜希子からね?優、見て貰っていい?」
「はいはい」
「(人の携帯、抵抗なく見せ合えちゃうって…。やっぱ2人は元カノ同士なんだなぁ…)」
「着く15分前に連絡下さいって」
「…やっぱそういう事か」
「はい?」
「ま、着けば解るわ」
(医院)
「ここよ」
「優衣菜、大丈夫?」
「ハァ…ハァ…」
「頑張れ、優衣菜!あと少し!」
「ごめん下さい…」
「あ…お待ちしておりました」
「あ…初芝彩花と申します」
「はい。勿論存じております。私、当クリニック院長の白井明日奈と申します」
「貴女が院長…。若いわね?私とどっこいくらい?」
「いかにも、品のいいお嬢様って感じですね?」
「まあ、院長と言っても形だけで、実際は看護師の仕事しかしてませんけどね?
白庭先生がご自分の名前を出したくないとおっしゃるので、私が代わりで…」
「ごほっごほっ…くるしぃ…」
「あ、ごめんなさい!さ、先生が奥でお待ちです。その子が患者さんね?」
「はい…。お世話になりま…すっっほごっほ!」
「さ、どうぞ」
「いらっしゃいませ」
「ちょっと…。どこの誰かだと思ったら、井荻じゃない?」
「春日…!ひっさしぶり!生きてた?」
「当たり前よ!なによ、あんたこそ…。世間は狭いわね…」
「春日、彩花さまと今でも付き合ってんの?」
「まさか。腐れ縁よ。井荻こそ…あんたレズだったの?」
「それこそまさか。当時自分で作ってた薬に、ヤバいくらいハマっちゃってさ…」
「…そういえば、あんた薬剤師目指してたんだものね?なれたんだ?」
「おかげ様でね?」
「今はヤバい薬作ってないでしょうね?私も彩花と一回使ったけど…すごかったわよ…」
「それが…今やそっちで稼ぐのがメインで…」
「マジか…!」
(診察室)
「いらっしゃい。あら…相変わらず可愛いわね、春日優衣菜ちゃん」
「よろしくお願いします…」
「すぐに看てあげるわ。上の服脱がせてあげて?」
「はい」
「幼い優衣菜を囲ってるなんて…。罪ね…彩花?」
「貴女に言われたくないわ」
「久しぶりね、初芝」
「宮前。貴女もいたの?」
「元々は私が今日夜勤だもの。亜希子先生は貴女のために残っていたのよ」
「こちらの人も知り合い?あ…秋津静香です」
「宮前香織です。亜希子先生と同じくここの医師よ?初芝とは母淫に入ってからの知り合い。初期メンバーなの」
「亜希子と宮前の2人シフトなの?」
「ううん。院長と3人シフトよ?院長の明日奈と私は一緒の医大だったから」
「24時間営業なんで驚きました…」
「ま、内緒なんだけどね?便利でしょ?」
「終わったわ。待合室で待つ必要ないから、優衣菜をそこのベッドへ寝かせてあげて」
「はい。…さすがに高熱じゃ、生意気な事言えずにおとなしいわね、優衣菜?」
「お久しぶりです…かおりん…」
「かおりんって呼ばないで。もう…やっぱり口は達者ね」
「ちゃんと15分前に連絡してあげたわよ?」
「それはありがとう」
「…お楽しみだったでしょ?」
「さあ?なんの事かしら?」
「…どこ行くの?」
「言わなくても解るでしょ?」
「…さいてー」
「性癖っていうのは、どんな物であれ人に迷惑をかけずに処理するのが大人なのよ?仕方ない事だわ…」
「…なんの事?」
「あと3分したら覗いてごらん?」
「あはんっ!あはぁぁっ!うひぃぃぃ!」
「な……なんですか?」
「亜希子は、若い女の患者を見ると発情する癖があるのよ。ね、下劣でしょ?」
「うわぁ…。なんかひどいな…」
「どうせ私が来るまで、みんなでエッチしてたんでしょ、宮前?」
「し…仕方ないじゃない!母淫はあんたが作ったんでしょ!母淫の規律にのっとったまでよ!?」
「レズは病気だ。しかし、世界でただ一つ、治す必要のない病気である」
「はい…?」
「昔、私が書いた本に載せた言葉。そこにも飾ってあるでしょ?座右の銘なの」
「うわぁ…達筆」
「人間はね…。病気なら人生を少し休む事ができる。でも…病気じゃないのなら、休んではいけないわ。特に日本人は。ね、彩花?」
「…ずいぶん遠回しな皮肉ね?」
「何を迷っているのか知らないけど…私達レズの目標は、今くらいでは全然ないわ。何立ち止まってるのよ?疲れたの?」
「…迷ってるのよ。あと慎重なの。ただそれだけ。病気じゃないわ」
「残念ね。人の迷いがもし病気であったなら、私が治してあげたんだけど…」
「いえ…。貴女は人の迷いを治す医者だったわ、初芝。多くの人の迷いを無くしてした…。だから、貴女は治した人達を最後まで看続ける義務があるの」
「……」
「彩花さま…」
「…貴女がもし、その迷いを病気と認めたなら…私が治してあげるわ。だから…いつでもいらっしゃい、彩花…?」
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