(8月11日)
「もうっ!あなたが来るっていうから、のぞみが遠慮して来なかったじゃない!」
「むぅ…。きっと気を使ってくれたのよ?うふふっ!」
「うふふっ!じゃなくて!」
「でも、ほんと優の趣味に付き合ってあげるのなんて、のぞみと私くらいなものよ?」
「哀れまないでよ!ふん!」
「花火大会とかならまだしも、なんで見知らぬ町のお祭り巡りなんかするのよ…。しかも、浴衣でもなく私服で…」
「だってさぁ?町内会のお祭りって、絶対地元の人しか来ないじゃない?そこに紛れ込んでるのって面白くない?ね?」
「はいはい。相変わらず優は、人が絶対やらないような事が大好きね?」
「バカにしてるでしょ」
「ううん」
「うそだ」
「信じて貰えないなんて悲しいなぁ…」
「…そういえば、私達が別れるって話、最初にしたのって…地元のお祭りの時だよね?」
「あ、覚えててくれた?私、あの時はまだ優に甘えてばっかのダメ女で…」
「…ちょっぴり、ケンカしちゃったわよね。あの夜は」
「だって…。私、優と別れるとは言わなかったけど…優のために、もっと賢くて凄い女になろうと思って、一生懸命頑張ってたのよ。
なのに、優と来たら…。なんて言ったか覚えてる?」
「‘頑張ってる彩花は嫌い’って言ったのよね?その後も、何度も言ったから覚えてるわ」
「ほんとヒドいわよね…。泣きながら訴えたわ」
「私、今でも‘頑張ってる彩花は嫌い’よ。だから別れたんじゃない?」
「…うん。だから、私達は別れる事ができた。優に嫌われるため、私は頑張ったわ」
「…ごめんね。本当に」
「ううん。あの時、聞いた事覚えてるから。‘頑張ってる彩花が嫌いなら、頑張らない彩花は好きって事?’って聞いたら、うんって」
「今でもそうよ?」
「だから…こんなに後ろ髪ひかれるんだわ。だって、頑張るのをやめたら…また優は私を好きになってくれるんだもの…。こんなに嬉しい事はないわ…っ」
「…ごめんね。彩花を応援してくれる人は、彩花が頑張ってるおかげで、たくさんいるじゃない?だから、私は応援しない。反対するの。ひねくれ者だから…ね?」
「相思相愛に…なりたいな。今度はきっと私が、優を幸せにしてみせるわ…」
「…ばーか」
「えっ?」
「悪いけど…レズ萌え荘に私を呼んでくれた段階で、もう幸せだから。孤独のあまり壊れてた私を助けてくれたの…彩花だから」
「じゃあ…もしかして、もう…相思相愛…?」
「…バカバカしいわね。言葉がなくても、心があるでしょ?心が繋がらないでどうするの?いちいち聞かれなきゃ解んないわけ?バカらしいわね」
「…うふふっ」
「…別にもう頑張らなくていいから、帰ってきなさいよ…?確かにあんたは凄い人になったけど…。人生って人に縛られて生きるよりも、一人のほうが楽しいから」
「……」
「…ふん」
「優はほんと変わらないわね?」
「おかげさまで、すっかりダメ人間のレッテル貼られてますけど?」
「…優が心を病んで、私を訪ねてきた時、私言ったよね?母淫は会社のようであり、学校のようであり、家族のような組織にしたいって」
「…言ってたわね」
「でも、優はどれにも当てはまらない。会社の上司や部下でもなく、学校の先生でもなく、家族でもない」
「うん…」
「いくら考えても解らないから…私は惹かれるんだと思う…って」
「…そんな大した人じゃないわよ?単なるひねくれ者だから」
「…愛してる」
「!…えっ…!えっと…愛してる…」
「でも…やっぱ恋人でいて欲しいの。私が女だからかな…」
「彩花…」
「なぁに?」
「お祭り…一緒に来てくれて…ありがと」
「どういたしましてっ♪」
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