(7月28日)
「あぁ…。いいわ、これ。ほんといいわ。私のカラダが出汁(だし)を求めてるわ」
「貴女、その格好どうにかならないの…?みんなチラ見してるわよ」
「自信あるからいいの」
「もう…。貴女が日本に来てからの食生活にはずい分お供させて貰ったけど…ラーメンとはまたマニアックな所にたどり着いたわね」
「最初は魚だったんだけどね」
「紗都摩を付き合わせて、地方までマニアックな魚を食べにいってたそうじゃない?」
「日本に来たなら、マニアにならないと…と思って。でもまさか、通販じゃ手に入らない、地元でしかもたない鮮度の魚がたくさんあるのには参ったわ、ほんと」
「参ったわ…って、嬉しそうな顔しちゃって」
「彩花のラーメンのスープも、ちょっとくれない?」
「どうぞどうぞ」
「すぅ…!あぁ……これはこれは」
「何よ、そのリアクション」
「これは昆布の出汁ね。私のラーメンの鯖の出汁とは全然違う。ハァ…これが分かるようになるまで苦労したのよ」
「どんな苦労よ?」
「日本に来てから、ほぼ毎日味噌汁飲んで、出汁の良さがやっと分かるようになったんだから」
「そうなの?」
「そうよ。私は出汁の食文化で育ってないんだから、最初は美味しくもなんともなかったんだから」
「ふ〜ん…。なるほど。隠された贅沢だって言いたいわけだ」
「そう。細かな違いを楽しめるマニアなものが、一番贅沢なんだから。日本人はそれが贅沢だって自覚がないわ」
「だからって、ラーメンはジャンクフードじゃ…」
「いいじゃない?私はジャンクフード大好きよ。第一、こんなに繊細な味で素材もこだわってるジャンクなんて素敵じゃない?
私だって、何も濃くて油っこいものばっかりプッシュしてるわけじゃないのよ」
「最近は、あっさりした出汁系の店付き合わされるのが多いかも。ひょっとして歳?」
「あら、失礼ね。濃いのと脂っこいのはストレス溜まってる時、一人で食べに行ってるからよ」
「ふ〜ん…。じゃ、それが減った=ストレスが減ったってこと?」
「ふふっ…それはどうかしら?貴女が私の女になってくれれば、ストレスなんて存在しなくなるんだけど」
「…どうかしら。ストレスだらけになっちゃったりして」
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