(7月21日) | |
「はい。ありがとうございます。こちらに印鑑かサインだけお願いしま〜す」 | |
私は斎藤友恵。 中学の頃ヤサぐれて、高校中退。 アルバイトから宅急便の仕事始めて、最近やっと正社員になった。 つっても安月給で朝から晩まで。 プライベートな時間なんてありゃしない。 こんな仕事柄、無駄に筋肉だけはついてガタイよくなって… 色気なんてゼロだな。 まあいいさ。こうして何も考えずに時間が過ぎていってくれるほうがありがたい。 今日も一人、炎天下の中を車で配達。 帰り、何時になんのかなぁ…? |
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「はい、こちら失礼しま〜す!」 | |
「あら、ありがとう!待ってて。冷たい麦茶持ってくるから」 | |
「あ…お構いなく…」 | |
受取人は色々だ。 お客とは言っても、腹立つ奴も多い。 だからこうして、たまにいい人に出会えると、すんげぇ癒やされる。 私が最近配達しているエリアで、このおばさんはよく荷物頼むんだけど、 同僚からもみんな絶賛の、癒し系おばさんなのだ。 「ありがとう」とか「ご苦労様」の一言だけでも嬉しいのに、冷たい麦茶出してくれるとかありがた過ぎだろ…。 そんなある日のこと。 同僚の何人かが熱中症で倒れちまって、休み無しでハードワークしていた。 私も、熱中症にならないよう水飲んで注意してたんだが… |
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「あらあら。暑い中、ご苦労様!…ちょっと、顔色悪いんじゃない?大丈夫?」 | |
「大丈夫です。ありがとうございます」 | |
「麦茶持ってくるわね?」 | |
「あ、おかまいなく…」 | |
その、待たされている間だった。 さすがに二週間休んでないのはやべえよなぁ…とか思ったあたりで、 急に体が制御できなくなって…ドン!と自分が床に倒れた音が響き渡った。 |
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