(4月16日)
(バスの中)
「…だから、なんだってあなた達がついてくるのよ?」
「行く方向がたまたま一緒で」
「そうだったんだ!」
「…いや、嘘でしょ。泊まりがけでど田舎に来てるのに」
「恵さんって学生なの?」
「そう。知り合った時はまだ中学生だったわね」
「そんな歳下なのに、頭上がらなかったの?」
「そうね…。なんていうか、チートみたいに出来た子だったわ。あの頃から」
「ふ〜ん」
「あ、次ね」
「ピンポン、私が押す!」
「ぷぷっ…!」
「あー!今、すっごいバカにしたでしょ!いいじゃん!私、バスたまにしか乗らないんだし」
「前住んでた神奈川の団地、バスだったじゃない?」
「行きも帰りも終点だから押せなかった…」
「終点でも押せばいいじゃん?」
「そんな子供っぽい事しません!」
「基準わかんねー」
(校門前)
「ここ…女子校か」
「確かに男子いないね」
「ここで待ってれば、そのうち来るわ」
「ねーねー?静香はレズなのに、女子校は憧れなかったの?」
「あー…。私はちゃんと目覚めたの高校からだったからなぁ…」
「後悔してる?」
「後悔は…ないかな?女子校の女子ってなんか特別な感じじゃん?私、付き合うなら共学の普通の女子がいいな」
「共学にレズの女子なんていないって」
「お前は見つけてんじゃん、2人も」
「はるぴょんとみきちー?幼い頃は染めやすいんだよ。まだ常識がないから」
「悪どいなー」
「彩花に教わったんだよ?」
「お前か!」
「痛っ!ぶたないでよ…」
「優衣菜は女子校入るの、これから?」
「解んないな〜。でも、アリかもね。マリみてとか見て憧れたし」
「ん?なにみて?」
「マリみて。マリア様がみてる」
「あぁ…。百合野さんがレズになるきっかけだったとか言ってた奴か。漫画?」
「小説だよ。あんな女子校だったら、優衣菜も言ってみたいなぁ〜。薔薇様とか呼ばれたい」
「優衣菜じゃエロ過ぎて、むーりー」
「なんで!」
「彩花も読んだ事あるんだ?マリみて」
「そうね。あの頃はマディソンが大ハマリしてて…。‘日本にこんな女子校があるなんて素晴らしい!日本はレズ先進国じゃないか!’って言ってたわ」
「さすがにあんな学校ないけどねー」
「じゃ、オタク向けなんだ?」
「ううん。少女小説だから…少女漫画とかと同じカテゴリーね。NANAとか君に届けみたいな」
「ブレイクさせたのは、オタクの男子達なんだけどね」
「そうそう。マディソンが‘日本のオタク達ほど、レズに理解がある男性はいない!オタク最高!’って超絶賛してたわね」
「リアクション解りやすいなぁ…アメリカ人」
「静香も今度見てみる?」
「私、字苦手」
「アニメもあるし、ドラマもやったらしいわよ」
「へ〜…マリみてねぇ…」
「あの時、散々信者の人達からメールや投書があったもんね?彩花」
「どんな投書?」
「‘将来生まれてくるレズの子供達のために、こんな学校を作ってほしい’って投書」
「はぁ〜…なるほどね」
「みんな普通の学校で、仮に女子校であっても、男子が好きな普通の女の子を口説くのは相当難しいし、苦労したっていうからね。子供には同じ思いさせたくないのよ」
「確かに、レズは無理って理由で断られると、ちょっと卑屈になるよね…」
「…なるほど。なんか、私今さらだけど、彩花が母淫作った理由が解った気がする」
「ほう?な…なんでしょうか?」
「みんな暗くなっちゃうから、こんなエッチいっぱいのおバカ宗教で、嫌な気持ちをぶっ飛ばして貰おうと思ったんでしょ?」
「ふ〜ん…」
「じゃなきゃ、母淫なんてふざけた名前にしないでしょ?」
「…ほぼ正解」
「ほら見ろ!」
「私、なんも言ってないし!」
「正確にはね…?お祭りみたいなノリの組織にしたかったの。明るく、今だけならってパーっと盛り上がれるような感じのやつ」
「へぇ…お祭りかぁ…」
「で、私はそんなお祭りが365日開催される事が幸せなんじゃないかって思ったの。それが母淫」
「確かにお祭りの時って、気持ちが柔らかくなるよね…。‘せっかく、今だけなんだから’って思って、普段やらない事もやってみようと思うし…」
「普段知らない子とも仲良くしてみよう!とかって思うよね。はぁー…なるほど、祭りか。母淫は祭り…」
「ん?」
「あ…じゃあ、レズ萌え荘も祭りの一環?」
「まあ、そうね」
「私、裸もエッチも慣れちゃって、祭り感ゼロなんですけど?」
「じゃあ毎日楽しくない?」
「ふつー。ほんとふつー」
「母淫の無料小冊子とかホームページを見てみて?くっだらない企画山ほど作って、募集かけてるから」
「あー、あれヤバいね」
「どんな?」
「テレビの真似事とか多いかしら?落とし穴とか」
「マジで?誰にやんの?」
「参加希望した信者さんの誰か。けど、落とし穴は大概幹部にやるよね?彩花は8回だっけ、落ちたの」
「一桁違うわ。18回」
「マジ?やべぇーそれ超見たかった!」
「なんで尊敬されるはずの教祖様を、みんなで落としてゲラゲラ笑ってるのか…みんなおかしいわ、ほんとに」
「彩花だって、マディソンに早朝バズーカ毎年やってるじゃん」
「そうでした。てへ」
「てへ、じゃねーよ」
「まあ、まとめると毎日をお祭りみたいに過ごすには、普段とちょっと違う事をすればいいだけなのよ?人間、同じ事は刺激を受けないけど、新しい事では刺激を受けるんだから」
「そーなの?」
「そうだよ?歳をとると、時間を短く感じるっていうでしょ?あれは、新しい刺激が少ないからなんだって」
「へー…じゃ、子供は逆か。確かに子供の頃は時間長く感じたな〜。塾行ってる時とか、一分が長い長い」
「子供は新しい刺激が多いから、時間を長く感じるの。けど、大人だって新しい刺激を受ければ、時間を長く感じられるし、何より楽しいわ。特に日本は色んな娯楽があるんだから、色々試さなくちゃ」
「またお説教だよー?」
「アドバイスよ」
「まあ…確かに、新しい事やるのは楽しいけどねぇ」
「…遅いね、恵さん」
「いいのいいの。いくらでも待つわ」
「別に、呼び出して貰えばいいのに」
「恵と会う時は、決まってゆったりした気持ちになるの。効率とかそういう事考えないで、恵を信じていくらでも待とうって気になるわ」
「はぁ…。まるで神様仏様」
「…ねーねー、彩花。マリみてみたいな女子校作らないの?」
「作るって…どんだけっすか」
「準備はしてるわよ」
「ハァ!?」
「マジで!それ初耳!」
「マリみての反響で、さっきみたいな投書多かったからね。最近、廃校が多いでしょ?だから、場所はもう抑えてある」
「うわぁ…。どんなんなるの?」
「さすがに最初は、信者だけで試験運用かしらね。あ、マリみてからの要望とは言っても、最初はガッツリ私のやりたい事盛り込んでくつもりだから」
「じゃあ、エッチとかあり?」
「勿論あり」
「よっしゃあ!」
「よっしゃあ!じゃねーし」
「あなた達にも入って貰うかもしれないから、よろしくね?」
「私もっ!?今、学校あるんですけど!」
「私もー」
「ま、強制はしないわ。それに、色々考えて通いやすいようにするから、任せておいて?」
「心配〜」
「あっ…きた!」
「お待たせしちゃってごめんなさい…!」
「ううん。恵のためなら何時間でも待ちますから」
「本当にごめんなさいっ!」
「そんなに悪いと思うなら、体で払って?」
「解ったわ!」
「わわっ!待って待って!」
「この場で脱ぐのはまずいって!」
「…ね?こんな感じの人」
「なんだかなぁ…」
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