(2月4日)
「わざわざ私の所へかかりに来てくれるなんて嬉しいわ」
「…たまたま、昔住んでた所を散歩してたら、熱っぽいのを認識して…。体温計買って図ってみたら熱あって、それで来ただけよ」
「あら。でも、青葉台からここまでは結構あるわよ?よく我慢できたわね」
「バカにしないで。8度5分くらいだったら全然動けるわ」
「でも、正解よ。多分、これから熱どんどん上がっていくわ」
「やっぱり…。そんな気がしたから、来てみたわけよ…?当時のかかりつけのお医者さんは、もう5時でしまってたし…」
「このまま、ここで一泊する?さすがに、薬飲んでも、あと1日は安静にしてなくちゃ」
「そうよね…?こんな薬臭い中で寝られるかしら…?」
「あら、失礼ね?彩花の添い寝がいる?きっと、優が倒れたって言ったらすっ飛んでくるわよ」
「バカにしないで。あいつもそんな暇じゃないし…。第一、もう別れたんだから…」
「別れてからのほうが、熱心そうだけど。彩花は」
「…あんた達、それよりなんかいけない薬売ってたりしないでしょうね?鬼百合・戒だっけ…?静香があんたに薦められたって言ってたわよ?」
「薦めたけど、あれは鬼百合・戒じゃないわ」
「私が最近、問題にしてるのは、生活保護者に薬をバンバン出して儲けてる医者ね…。そんなに金儲けして何になるのかしら?」
「あぁ、それこないだ嘆いてましたね」
「なにそれ?」
「生活保護者って、薬代も国から出して貰えるのよ。だから、国からお金巻き上げようと、生活保護者にバンバン薬を出す医者がいるの。
普通、10種類以上も薬出すなんて有り得ないでしょ?」
「その薬を生活保護者から取り上げて、商売している人もいるみたいだし…。ほんと、医者は誇れる職業なんだから、もっとモラルを持ってほしいわ」
「ふ〜ん…。私、定時制の学校行ってる時に、生活保護受けてた人、結構いたわね…。なんでも人件費削減と効率化が絶賛される世の中だから」
「そういえば、真名香と優って旧友なのよね?優は真名香のどんなとこが気があったの?」
「…さあ。たまたま、私を珍しがってただけ…よ…」
「眠い?」
「薬が効いてきたのかも」
「少し寝る?」
「そうね…。ごめんなさい。体が痛くて…」
「これはまた、熱が出そうな予兆ね」
「じゃ、しばしおやすみ…」
「うん…」
「(うぅ…苦しい…。苦しいけど…我慢しなくちゃ…)」
「(こういう苦しい時は…苦しかった時の夢を見ちゃうわね…。高校時代の頃…)」
「(先生…元気してるかな…?…ほんと、みっともない。自分がこんなに孤独に弱かったなんて…思わなかった…)」
「(彩花にすがったなぁ…。あの時の彩花の優しい顔は…今でも忘れられないわ…)」
「(彩花…。なんだかんだ言って私、レズ萌え荘に呼ばれて…嬉しいわよ。あの時はお互いのために別れたけど…離れたからこそ、心は…)」
「…あらあら。泣いちゃってる」
「(真名香…!い、いつの間に…)」
「具合が悪くて苦しい時はね…?みんな思い出すんですって。苦しかった思い出を…」
「(なによ…?私が寝てないと思ってるわけ?泣いてる所なんか見られて…起きてましたなんて言えるわけないじゃない!シカトしよ…)」
「けどね…?苦しかった思い出の後は、みんな今まで自分に関わってきてくれた人に感謝するんですって。
それが、心の癒やしになる。また明日から頑張れるきっかけになったり、人生を見つめ直したりする事になるんですって…」
「(……)」
「だから、病気を決してマイナスに捉えないで。社会的にはマイナスかもしれないけど、
自分を見つめ直す機会は多ければ多いほど、実は人って幸せになれるんじゃないかって…亜希子が言ってたわ」
「(……)」
「貴女は毎日、人生を見つめ直してそうだけどね。羨ましいわ」
「(……)」
「一人一人、気づいていくしかない事があって、けど世の中は一人で考える時間なんて持たない方がいいって、凄く誘導されちゃうじゃない?
だから…病気になると、人は一気に孤独になる。それでも、人は本気で自分と向き合ったりできない。向き合うように教えられてはいないから」
「(……)」
「貴女や彩花には悪いけど…世界は私達が変えるわ。おやすみ…」
「(……)」
「(真名香…。……)」
「(解ってるわよ…そんな事。私は…彩花を愛せたから…幸せだっただけ。でも…それじゃ不公平だって言うんでしょ?解ってるわよ…)」
「(!…あ、愛してないわよ、彩花なんか!もう…別れたんだから…!)」
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