(1月11日)(ローカル線の中)
「ふぁ〜ぁ…」
「眠いの?昨日ちゃんと寝た?」
「寝たよぉ…。田舎だから退屈だよぉ…」
「そっかなぁ。私はなんか体が活き活きしてきたけどな!」
「ここは春だと、沿線が菜の花でいっぱいになるのよ?」
「なら、何故真冬に来た?」
「あら。冬だって、植物に興味を持てば楽しくなるわよ?花が咲くのは春だけだけど、それ以外の季節だって、植物はそれぞれ違う形をして生きてきたんだから」
「ちい散歩で言ってそうだな」
「ゲーム持ってくればよかったぁ…」
「我慢しなさい」
「静香が言ったんだよぉ…?母淫の本部が見てみたいって…」
「だって、まさか千葉のこんな田舎にあると思わないじゃん」
「千葉人の私でも、こっちはなかなか来ないなぁ…。渓谷の温泉に何回か行ったくらい」
「千葉に温泉あったんだ…」
「優衣菜んちの駅前にもあります!何回も誘ってんじゃん!」
「だって、電車賃高くて…」
「バイトしなさい」
「子供がエラそうに〜」
(母淫本部前)
「見えてきた。あれよ?」
「え?あれ?なんか、普通の広い家みたいだけど…」
「田舎にあるって言うから、まがまがしい金で出来たモニュメントとかあるのかと思った」
「そんないかにも宗教臭いことしないわよ」
「にしても彩花さま…。今更ながら、何故本部を東京に置かなかったんです?」
「土地高いし」
「ケチな教祖だな」
「私は東京がいいと言ったんです!なのに彩花さまが…。あぁ!あの時の腹立たしさが蘇ってきたわ!むきぃぃぃ!」
「豚が暴れています」
「あの時、説明したじゃない…?宗教なんだから、何も会社みたく千代田区丸の内とかにある必要ゼロだって」
「?…ちなみに、会社だったら東京がいいの?」
「会社は、名刺に書かれた住所で、その会社の大きさや信頼度を図るのよ。
千代田区にあるなら、頼りになりそうだなぁ〜とか。あと、相手への威圧にもなるしね。逆に住所が東京のハズレや千葉ならナメられるわ」
「それ、くだらないなぁ。今どき会社の規模や信頼なんて、そんなので判断したらバカじゃん?」
「少しでも優位に立っておきたいのよ」
「…こんな質問悪いんだけど、なんで和奏がそんな事に詳しいの?ちょっと意外…」
「一応、ちょっとの間でもOLやってましたから…。すぐ辞めちゃったけど」
「それ、素で知りませんでした」
「それだけじゃないでしょ?…もうぶっちゃけちゃえば?」
「…家族の事はノーコメントです」
「なになに?」
「和奏のお父さんは地上げ屋なのよ」
「言っちゃうのかよ!」
「あ、彩花にタメ口した…」
「はっ…!お、お許しを!彩花さまぁぁ…!」
「だからって尻を向けるな」
「さまぁ〜ずの三村っぽかったし、許してあげてよ」
「それ、関係あんの?」
「だって、和奏ってほんと私の事か、人への嫉妬しか言わないんだもの…。和奏は末っ子で、お兄さん達はもう結婚してるわ」
「へぇ〜。じゃ、家族構成、うちと似てんじゃん?うちは結婚してんの一番上の兄貴だけだけど」
「お兄さん達も、なんというか…お金儲けが上手な人達でね?それこそ、丸の内って住所を人の名刺に使わせる権利だけでお金貰ってたり…」
「やめて下さい!彩花さま!男はみんな汚らわしいんです!お金も、使い方や稼ぎ方次第では汚らわしくなります!」
「あれ?じゃ、和奏って少女マンガとかにありがちな、家お金持ちだけど、お父さんが愛人たくさん作ってて男性恐怖症みたいな人?」
「むしろレイプされてたりして」
「失礼ね!そんな単純じゃないわよ!」
「ちゃんと自分のことを話せる力を身につけなさいって、昔から言ってるのに…」
「中途半端に誤解を生むから嫌なんです!どうせこいつらの頭に、私がどう説明したって意味ないわ!どうせみんな下らない主観しかないのに!」
「ひど〜い」
「ていうか、彩花と和奏がモメるの初めて見た…。なんか貴重」
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