(1月10日)(銭湯)
「ふぇ〜」
「あら、どうしたの?」
「お湯熱っついよ〜!体真っ赤になっちゃったよ…」
「だらしないわねぇ。これくらい」
「うんうん。静香はだらしない」
「優衣菜はまだ浸かってないだろ!」
「…静香が水入れてから入ろうと思ってました」
「あんたって、意外と負けず嫌いよね」
「しょうがないわねー。ちょっと薪減らすか…」
「ちなみに、今日も貸し切り状態だけど経営大丈夫なの?」
「あんた達が来るのが夜遅過ぎなのよ?夕方とかなら結構混んでるわ」
「お年寄りは何でも早めにこなすからね」
「だからお医者さんは午前中の朝一が一番混むのか」
「ま、経営のほうは散々だけどね…。震災で色々傷んじゃったし」
「あらら…。ただでさえ老朽化してるのに」
「結構、建物の傷みが原因で辞めちゃった同業者は、去年今年と多かったわ。修理するには凄いお金かかるし…」
「あきっちは、廃業考えてたりした事あるの?」
「そりゃもう…。けどやっぱり、辞めちゃうと常連さんが悲しむから、続けられる限りは続けたいわ」
「そう言えば、前に立ち寄った銭湯がたまたま閉店の日で、お客さんが…。うん、まあ解るわ、辞めたくない気持ち」
「どんなだったの?」
「泣いたりするものなの?」
「泣くっていっても、うわんうわん泣くんじゃなくて、思い出とか感謝とか…そういう気持ちの涙って感じかしらね」
「解るわ…。第二の家みたいなものだもの」
「家族には言えなかった弱音を吐いた事もあるっておじいちゃんがいたわ」
「昭和の男って感じだねぇ」
「私達にとってのTwitterやメールみたいに、お年寄りの人にとってのコミュニケーションスペースなんだね…お風呂って」
「さながら大昔のSNSね」
「…へくしっ!」
「昭和」
「充分体冷えたから、もう熱いお湯イケるんじゃない?」
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