(12月29日)
「えー?彩花の過去が知りたいの?」
「うん」
「私じゃなく?」
「あんたはガキなんだから、まだ過去なんてないでしょ?」
「むー!あるもん!…なに、静香?前のマディソン達の事気にしてるの?」
「ていうか…前、彩花がしんどそうだった時、優に任せて私達、何もできなかったじゃん?それは、彩花の昔を知らないからかなーと思って」
「まあ、私も母淫設立前の彩花はよく知らないからなぁ…。お姉ちゃんの方が詳しいよ?元カノだから」
「じゃあ、優さんに聞いてみよう」
「却下。教えない」
「けちー!」
「なんで!?」
「静香。私と貴女は恋人なのよ?まずは私の事を知りたがりなさい?失礼しちゃうわ」
「めんどくさい人だなぁ…。そんな設定忘れてたくせに…。ひそひそ…どうせ、お姉ちゃんの過去を聞いてけば、芋づる式に彩花の過去も出てくるよ…?」
「ひそひそ…。じゃあ、それでいくか…」
「静香、お姉ちゃんの過去に実は興味津々だって!」
「そ、そう…?じゃあ…仕方ないわね。人に話すような面白い話じゃないけど…」
「ひそひそ…。うわぁ…めっちゃ嬉しそう…」
ひそひそ…。お姉ちゃん、基本友達いないから…」
「裸で話すような事じゃないけど…」
「じゃあ、服着て近所のマックかどこかで話します?」
「そ…そうね。裸だと落ち着かないわ…」
(マック)
「優衣菜?店内なんだから、そのローラーシューズみたいなのは脱ぎなさい」
「けちー」
「優衣菜はハッピーセットじゃないの?」
「むぅ〜!そんな子供じゃないもん!」
「でも、マックポーク3つって、なんで…?」
「優衣菜、育ち盛りだもん!それに、ハンバーガー3個も食べたって学校で自慢できるし!」
「やっぱガキじゃん…。あ、優さんポテト摘んでいいよ?」
「ありがと。私、お金なくてねー」
「バイトしなよ?」
「やぁだ。普通過ぎる」
「むぐむぐ…。クォーターパウンダー旨っ!」
「えっと…。私の昔の話だっけ?」
「ついでに彩花のも」
「私ね…。今見ても解るかもしれないけど、昔っからひねくれ者なの。人と同じ事するのが、とにかく嫌な子で…」
「うん。そんな感じする」
「小学校の時…友達いなかったんだけど…」
「今もいないでしょ」
「うるさいわね!…小学校の時、唯一友達になれたのが彩花だったの」
「まあ、あの人寛容そうだもんね…」
「違う違う!彩花は小学校の頃、めちゃめちゃ暗かったのよ?いつも1人で死んだ目してたわ」
「うそっ!?」
「マジで…?」
「まあ、暗いというより、まわりがみんなひいて、近づかなかったのよね?あの子の体、いつも謎の傷だらけだったから」
「謎の傷?」
「言っていいのかな…。親に虐待されてたの、彩花」
「うわ…」
「そうだったんだ!」
「でも子供の頃は、そんなのの傷だって推測すらできないじゃない?だから不気味で誰も彩花に近づかなかったの」
「でも、お姉ちゃんは近づいたわけだ」
「だって、面白いじゃない?傷見せてーとかって言って、いつも見せて貰ってた」
「おいおい…」
「子供なんて、そんなものよ。そしたらそのうち、彩花は‘自分がレズだ’とか言い出して…ますますみんなはイミフで近寄らなかったわ」
「でもお姉ちゃんは?」
「食いついた食いついた」
「クマグスかい。ナツいな」
「でも、彩花はその頃からレズだったんだねー?さすが母淫の教祖さま」
「ううん。…これも言っていいのか解らないけど…少なくとも当時彩花がレズだって言うのは嘘よ」
「嘘なの!?」
「なんで!?」
「これは…真偽は定かじゃないけど、彩花は…親に性的虐待も受けてたって話で…」
「ロリコン親父かよ!」
「しかも自分の娘に…?さいてー…」
「で、レズって言い出す事で‘私は気持ち悪い女だ’って思われようとしたらしいの。レズなら男が気味悪がると思って」
「…なんか、すいませんでした。重い話聞いちゃって」
「彩花、可哀想…。うちの親も変人だけど、そんな人じゃなくて良かったねー?」
「そうね。生まれなんて子供にはどうしようもないのに…それが運だけで決まるなんて皮肉な話だわ」
「それで?」
「ああ…。じゃあ、その頃私と彩花が恋人同士になった話でもしましょうか」
「聞きたい聞きた〜い♪」
「うん…。私ね、ある日の学校の帰り道…自転車置き場で…」
(回想)
「その傷、カッコいいよ!マンガのヒーローみたい!」
「そ、そうかな…」
「また新しい傷できたら見せてね〜♪」
「……」
「そういえば、昨日のテレビ…きゃあ!?」
「…っ…」
「な、なにいきなり!?ドッキリ…?」
「ムカつく…」
「え…?」
「ムカつく…!ムカつく!だからお前を…めちゃめちゃに傷つけてやる!」
「き…きゃぁぁぁ!嫌っ!嫌っ!やだ!やだぁっ!助けて…!誰かぁ…!」
「死ね…!お前なんか死んじゃえ!みんな…死ねばいいんだ!ほら…痛がれ!痛がれよぉっ!!ひひひひひっ!」
(回想終)
「お姉ちゃん…犯されたの?彩花に…」
「うん…。怖かった…。今まで友達だった子が、急に言葉が通じなくなったみたいに、暴力で抑えつけられて…。誰も助けに来なかったし…」
「ヒドい…。彩花ってそんなヒドい奴だったんだ…」
「待って。誤解しないで!彩花が言うにはね…?親に自分がやられた事を、自分も人にやってやろうと思ったらしいの…」
「なんか…やだな。そういうのって…」
「憎しみの連鎖…。なんか戦争でも起きそうな発想だね…」
「でも、彩花を責めないであげて。まだ子供だったんだし、彩花の親が元はと言えば悪いんだから…」
「…でもそれが、2人がカップルになった事とどう繋がっていくの?」
「それはね…?犯された後で…」
(回想)
「ハァ…ハァ…」
「ハァ…ハァ…」
「…彩花?」
「うっさい…!」
「……」
「こうやって…お前を毎日苦しめてやる!それが嫌だったら…私の友達なんかやめろ!絶交だ!」
「……」
「あぁ…楽しかった…。人を傷つけるのって最高…」
「ま…待って!」
「…んだよ?」
「ち…超楽しかった…!!」
「!?」
「すっごく楽しかったよ!そういう遊びなんだよね!?ホラー映画的な?彩花ちゃん超怖くて…。でも、超気持ち良かった!今のがレズ?」
「…っ……」
「と…とにかく超面白かったから!全然…全然良かった!むしろ楽しかった…!」
「…ぅぅ…ぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…!!!」
「彩花…ちゃん?」
(回想終)
「なんでそんな事言ったの?」
「自分でもよく解らないけど…このままじゃ彩花と今日限りで友達でいられなくなる気がして…。
だから、これを楽しかったって言えば、まだなんとかなるかなっていう…」
「でも…偉いよ、優さんそれ…。彩花、泣いちゃうわけだよ…」
「それでその後…私は彩花と恋人になったの。もう怖い感じじゃなくて…お互いが気持ちよくなるように…」
「たくまし〜い」
「2人とも変わり者だったから…楽しかったわ。彩花もスポーツやってたくましくなって…親の虐待もなくなったって言ってたし」
「幸せ絶頂期ですな!」
「毎日のようにエッチして…。所構わずエッチして…。思えばあの頃が、彩花の母淫の方向性の原点なのかもね?」
「でも、そんなに仲良かったのに…なんで別れちゃったの?」
「母淫を設立した時、彩花は高校生だったけど…その頃はもう付き合ってなかったよね?」
「別れたのは…高校進学の頃よ。でも、仲が悪くて別れたんじゃないわ。お互い…このままラブラブしてたら、それだけで一生終わっちゃいそうって話になって…」
「うわっ!なんて幸せな悩み!」
「別れざるを得なかったのよ。別れないと毎日会って、エッチしまくるだけで終わっちゃって…。理性なんてどっか言っちゃって、どうでもよくなっちゃうの」
「ケダモノですな」
「羨ましいなぁ…」
「このままじゃ、私の未来がダメになる!と思って別れたの」
「辛くなかった?」
「しばらく…というか、今でもたまにしんどいくらいよ?本当、自分の体の半分…いや、全部持っていかれたって感じかしら…?」
「じゃあ、彩花が母淫の設立したのはその後?」
「そうよ。彩花は当時から、レズって社会的にどのこうのとか、風潮がくだらないとか、なんか問題点を挙げてたからね」
「それで母淫を設立か」
「正確には、元々あったレズが集まる組織を、仲間と一緒に乗っとって、色々ぶっ壊して新たな決まりを作ったのよ。それが母淫」
「優衣菜も、そのぶっ壊すメンバーの1人だったんだよ!でも中心は、彩花やこないだのマディソン、紗都摩さんとかだったの」
「彩花がネット上で、レズと人類の未来がこう結びついてこうあるべき!みたいな声明を出して、それで集まったメンバーに、優衣菜やマディソンもいたのよ」
「優は参加しなかったの?」
「私が参加したら、彩花が甘えちゃうから…」
「それであの時、私に薦めるだけ薦めて自分は入らなかったんだねー?」
「で、その声明っていうのを今でも崇拝してるのがマディソン達、声明の一部を変えたいと思っているのが彩花なわけ」
「なるほど…。それで対立してたのか…」
「私もレズだったから、彩花の声明は当時凄い!と思って、興奮してたよ。
けど、実際に実現を目指す段階になると、やっぱり迷うんだよ…。犠牲はなんにでも生まれるから…」
「大変だなぁ…」
「…静香。なんか相槌が適当になってきてない?」
「眠いから」
「ちょっと!?」
「しょうがないよ、お姉ちゃん。明日も大掃除しないといけないし…もう寝よ?」
「あなた達が聞いてきたんじゃない…?ふん!」
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