(12月11日)
「はぁ〜ぁ…。ねぇ?私と優が恋人って設定、どこ行ったの?」
「最近、暇さえあればそこいじってくるわよね…」
「もう裸でも恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいわよ!だから、こうやって胸隠してるんじゃない!」
「股間は隠さないの?」
「きゃっ…!見ないでよ!」
「早く慣れればいいのに」
「慣れるか!」
「そういえば優ってさー?なんで冬木さんと仲いいの?一緒に散歩行ったりとかして」
「のぞみ?ああ…高校ん時に一緒のクラスだったから」
「嘘っ!?」
「わっ!ビックリしたぁ」
「静香見ながらおなにぃしてたのに、ビックリしてしまった…」
「するなよ。目の前にいるのに」
「だって、優衣菜最近解るんだもん…。静香に今エッチしよ!って言っても断られるだろうなぁ…的なオーラ」
「うん…。確かに今はエッチの気分じゃないかも」
「ほら〜」
「で、なんだっけ?…冬木さんって、優と一緒の高校だったの?」
「私、今それ始めて知ったんですけど…。隠してたの?」
「全然。たまたま言ってなかっただけ」
「お姉ちゃ〜ん?ぶーぶー」
「いつ一緒だったの?何年生?」
「定時制だったから、一クラスしかなくて、ずっと4年間一緒だったわ」
「4年?3年じゃなくて?」
「定時制は一年多いんだよ」
「定時制って、あれか…。夜行くんだっけ?」
「そうよ。夕方5時半から始まって、夜9時過ぎに終わるの」
「不思議…。サラリーマンのアフター5の時間じゃん」
「どんな人が来るの?」
「ご年配の人が多いわね。若い子はみんな家に事情があるとか…そんな感じ」
「優はなんで定時制に行ったの?」
「面白そうだから」
「は?」
「普通の高校じゃ味わえない事がいっぱいあるかなぁ…と思って。現に夕方学校に行くなんて面白いでしょ?」
「お姉ちゃんって、ほんと変人だよね…。彩花と急に別れたかと思ったら、それだもん」
「で…冬木さんと一緒のクラスだったんだ」
「一クラスしかなかったけどね。私と同い年くらいの女子は、のぞみを含めてもほとんどいなかったわ」
「……」
「あ…噂をすれば」
「……」
「なに?散歩行くの?私も行くわ」
「えぇ〜?お話は〜?」
「また今度」
「ぶーぶー」
「それ私の…」
(散歩中)
「……」
「ねぇ…?話していい?」
「(こくっ)」
「昨日、静香に聞かれたから話しちゃった。高校の頃の事…」
「……」
「遠い昔の事みたいよね。私が、のぞみの前の席に座って…しょっちゅう話しかけててさ…」
「…鬱陶しかったわ」
「でも、ちょっとずつリアクションしてくれるようになっていったじゃない?
渡辺先生も‘冬木さんが春日さんのおかげで表情豊かになった’って誉めてくれたんだから」
「……」
「でも、やっぱり一番嬉しかったのは、3年の時かな。私が鬱になって、学校来なくなっちゃった時…」
「!」
「うち…わざわざ来てくれたじゃない?あれ…本当に嬉しかった」
(回想)
あれは高校三年生の頃。
私は学校に、あまり行かなくなっていた。
定時制も三年目を迎えて、マンネリであまり面白くなくなってきたっていうのもあるし…
何より、世の中にとことん逆らって生きていくのを、しんどいと思い始めたのだ。
優「なんで私…こんなにひねくれ者なのよ?凄い、人生損してるわ…」
みんなが好きなものを、あえて好きにならない。
私しか好きにならないようなものを、私だけの観点で好きになる。
それは、大きな犠牲を伴う。
友達なんてほとんどできないから、いつも一人。
それでも平気…なはずだったのに。
彩花がいなくなって、二年も経ってしまったからだろうか…。
優「彩花…ごめんね。あと…ありがとう…」
一番情けなかったのは、彩花と自分を比べ始めてしまった事だ。
彩花は母淫を作り、三年目の今日にはかなり組織を大きくしている。
対して、私は…。
彩花を嫉妬する情けない私。
私は、そんな中、彩花に逢いにいってしまった。
彩花との距離に怯え、人生の実績の差に恐怖しながら…
(回想)「……」
彩花の目は、私を哀れんでいた。
こんな私、見たくなかったって感じで。
でも、そう感じたのは私の被害妄想で、実際の彩花は私を優しく抱いてくれて、良かったらずっとそばにいていいと言ってくれた。
もう一度、恋人になりたいとさえ…。
けど、私はそれを遠慮して、以来彩花とは一度も逢ってない。
こんな私は…彩花と釣り合わない。
今、彩花の言葉に甘えたら、一生私はダメ人間…。
だから断ったんだけど、
別に何かが解決するわけじゃない…
「お友達よ?」
「え…?誰?」
お友達が来た?
誰だろう…?
該当する人物が思いあたらなかった。
中学までの友達は彩花しかいないし、彩花ならうちに居候してたんだから、お友達なんて言い方しないはず。
あとは私に友達なんて…
「知らない。私、友達いないし…」
「とにかく出て。優に用があるって言ってるんだから」
仕方ないから、出ていく事に。
すると、そこには…
「のぞみ…!」
「…こんばんは」
意外過ぎた。
のぞみが、私の家を訪ねにきた…?
しかも、私はのぞみを正直友達だと認識していなかった。
私が一方的に話しかけて、迷惑している人って思っていた。
なのに…
のぞみは…私の、友達だったんだ…
私とのぞみは、20分以上玄関で話をしていた。
母親に「上がって貰いなさい」と何度も言われ、ようやく部屋に上がって貰った。
別に…意地悪で部屋に通さなかったわけじゃない。
興奮して、話を一瞬でも途切れさせたくなかったのだ。
親とかを除けば、人と話すのがあまりに久しぶりだったから…というのもある。
けど、何より一番の理由は…
「差し入れ買ってきました!オリジンで唐揚げとサラダと…」
「あ、ありがとう…」
「ごめんね…。私、料理下手で…」
よく喋る。
それに、表情がある。
どちらも、のぞみと付き合って二年間、一度も見た事がない光景だ。
だから、私は夢中になって話した。
奇跡みたいだった。
まるで普通の友達みたいに、のぞみが接してくれる。
それが嬉しくて、ありがたくて、私は涙が出そうだった。
「びっくりしたー。まさか、のぞみがテレビ見てるなんて想像つかなかったー。いつも私がテレビの話しても無反応だったのに…」
「話は聞いてましたよ…。テレビの内容よりも春日さんの話が面白くて…」
「ブラマヨが好きなんだー。覚えとくわ。うわっ、一生忘れなそう。意外過ぎて」
「じゃあ誰なら意外じゃなかったのよー?」
そろそろ、心配なくらい遅い時間になってきた。
のぞみは泊まっていかずに帰るというので、私は…明日ののぞみも今日と同じであって欲しいがために、こんな質問をした。
「のぞみさ…?なんで今日はこんなに喋ってくれて、こんなに笑ってくれるの?いつもはあんなに静かなのに…」
もしかして、逢っていないここ半年で、のぞみにも変化があったんだろうか。
好きな人ができたとか。
あるいは、二重人格だったりして。
「……」
「い…言いたくなかったら、言わなくても全然大丈夫だから…!」
びびった…。
このまま、また無口に戻ってしまいそうな気がして…。
「…練習してきたんです」
「え…?」
「声を出す練習です。あと笑う練習も…」
「れ、練習…?」
私は絶句した。
声を出したり、笑うのに練習が必要って…
のぞみ「私…1日、一言も発さずに過ごしているから…いざとなった時も、急に声って出せないの。笑うのも同じ…。
どう筋肉を動かしたらいいかとか、自然に解るはずの事を、忘れちゃってて…」
そ…それって、相当末期の鬱なんじゃ…
「なんで…そんなに、誰とも喋らないの?家でも?」
「私は…家、ないわ」
!!…地雷踏んだ!?
「す…すみませんっ!」
「違うの…。全部話しても、怒らない…?」
「怒る…?ううん。怒らないと思う…」
「じゃあ…。私の両親は、中学の時に2人とも自殺しました」
「!?…」
頭が真っ白になった。
「私は…知り合いの外国人の方にお世話になって、今はその方の家か、ビジネスホテルとかに泊まっています…」
「そ…そう…ですか…」
言葉がなく、なぜか敬語に。
「…こないだ、ビックリしました」
「…なに?」
「その外国人の方が…尊敬する仲間がいるんですが、その人が更に尊敬する人の名前が、たまたま春日さんと一緒だったんです」
「優…?ああ、そうなんだ…。割といるわよ?有名人とかでもいるし」
「名字も一緒なんです」
「へぇ…。春日って名字は結構珍しいわよ?オードリーで有名になったけど」
「…もしかしたら、本人じゃないですか?」
「へ…?」
「だって、年齢も春日さんと近かったし。ちょっと上だったかな…?」
「…あ」
今、のぞみが言ってる人にある人物達の構図を当てはめたら、ぴったりハマってしまった。
「…いや、そんなわけないな」
「なに?」
「あ…私のまわりに昔いた人を当てはめたら、スポッとハマって…」
「まさか…!」
「あ、ううん。何でもない。勘違いよ。さすがにないない」
「そうですか…」
でも、嫌な予感がしたので、一応言ってみる。
「いやね…私の昔の友達に、初芝彩花ってバカがいたんだけど…」
「彩花さま知ってる!」
「うっそ!?」
まさかのまさか!?
「マディソン知ってますか!?マディソン・テーラー!」
「ああ…。逢った事はないけど、知ってるわ。彩花が、最高の同志だって絶賛してたから…」
ご都合主義過ぎでしょ!
世間せめー
「え…?じゃあ、のぞみ…母淫なの?あのインチキ宗教」
「はい。一応…」
うっそぉ…
そんなの、早くから知ってれば、もっと色々あったかもしれないのに…
「レズ…なんですか?」
「はい…」
マジか…。
「両親が自殺したのは、私のレズが原因かもしれないんです…」
え……。なに、いきなり重い話?
「冬木さ〜ん。ほんとに泊まっていかなくていいの?もう10時過ぎてるわよ」
「あ…さすがに最終が…。じゃあ、お邪魔しました!」
「え…?ちょっと待って!バス乗り場まで一緒に行く!」
「泊まっていって貰いなさいよ?どうしてもダメなの、冬木さん?」
「はい。今日はお世話になってる外国人の方に、ご奉仕する日で…」
「ご奉仕?」
私は結局、玄関まで行ってのぞみを見送った。
なぜ、バス乗り場まで行けなかったか…?
私は、ずっと外へ出ていなかったから、怖くなってしまったのだ。
この近所には、昔のクラスメートとかが住んでる。
会いたくない。みじめな自分を見られたくない。
それに…のぞみが急に喋るのに練習が必要だったように、私も外へ出るのに練習が必要みたい…。
「さ…最後に一つだけっ!」
「うん?」
「私が明日、学校行ったらさ…?こんな風に私とまた話してくれる…?」
「…ごめんなさい。多分無理…」
「……」
「でも…学校には来てほしい…」
そう言って、のぞみは帰っていった。
私はあくる日、何十日かぶりに学校へ行った。
みんな訳ありだから、誰もいじったりしてこなくて助かったけど、のぞみはいつもの無口さんに戻っていた。
この一夜は…まるで魔法か何かのようだったみたいに。
けど…それでも私は、のぞみのそばにいたかった。
(回想終)
「結局、あの後ほとんど、あんな風に明るくなんて振る舞ってくれなかった」
「……」
「でも、私はおかげ様でまた学校に行けるようになり、無事に卒業」
「……」
「…で、レズ萌え荘で再会。どう?最後はダイジェストだったけど」
「どうもしない」
「いつの間にか、マディソンのNo2みたいになって、本気か知らないけど、彩花を殺そうとして…。
何があったのよ?あの時はまだ、母淫に入って楽しんでるんだと思った」
「マディソンが…私が生きてる意味を保証してくれているから…」
「生きてる意味を保証?…なにそれ?5年保証?」
「……」
「…あん時を除けば、唯一毎日出してた声が、マディソンとエッチしてる時の喘ぎ声だったんでしょ?」
「!っ…」
「…ごめん。意地悪だったわね」
「エッチは…本当に気持ちよかった…」
「え…?」
「自然と声が出た。気持ちよくして貰っているからっていうのもあるけど…何も考えなくていいし、喘ぐと…マディソンが凄く喜んでくれるのが解るから…」
「…ビックリした。早口で言ってたけど、照れてるの…?」
「!…別に。本当の事を言っただけ」
「私とじゃ、ダメなの…?」
「え…?」
「私…別に、今すぐここで、裸になってのぞみとエッチしたっていいわよ?」
「…優は…友達だから…」
「え?」
「友達だから…無理」
「と、友達?」
「っ…!」
「きゃっ…!どうしたのよ、のぞみ!急に走って…!待って…!待っ…ハァ…ハァ……早い…」
「なによもう…。母淫なら、友達同士だってばんばんエッチできるじゃない…?どういう意味での友達なのよ…?」
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