(12月5日)
「むにゃむにゃ…。?…あれ…?」
「……」
「(ガラガラ)まだラジオ聴いてるの…?」
「こら。子供は早く寝なさい」
「?…なに、この歌?古〜い」
「昭和27年のヒット曲だって」
「なんか、盆踊りの時の歌みたい…。音が割れてる…」
「好きなんだ…。ラジオ深夜便って言ってね?NHKのお年寄り向けのラジオなんだけど…」
「…静香ってさ?いつも言ってるけど、ほんとに昭和だよねー?」
「深夜便は、おばあちゃんがよく聴いてたんだ…。今の優衣菜みたいに、私が寝ぼけて起きた時に聴いててさ…?」
「一緒に住んでたんだ…おばあちゃん」
「うん。今は…ボケちゃったから、施設に入れられちゃったけど…」
「…静香、怒ってる?」
「…よく解ったね?私、おばあちゃんっ子だったから、家族のあの判断だけは許せなかった…。
レズ萌え荘へ来たのの、ちょっと前…。だから私、ためらいなくここに来れたのかもしれない」
「…そういえば静香、私みたいに実家へあんまり帰らないもんね?」
「おばあちゃん…」
「静香…」
「確かにショックだったよ…。おばあちゃんが私の事を忘れていた時…頭が真っ白になった。
他人のような、全くの別人のような気がした…。
…いっそ、こうなる前に亡くなってくれた方が…とも思っちゃった。
けど……家族みんながそう思って、おばあちゃんを施設へって話になった時…私は嫌だった。
だって…おばあちゃんは…ボケたくてボケたわけじゃないのにさ…!」
「…泣かないで。静香…」
「…このラジオを聴くと、今でもおばあちゃんが、聴いてくれてるような気がするんだ。勿論、そんな訳ないんだけどさ…」
「……」
「私…最低な人間なんだよ。あの頃のおばあちゃんなら愛せて、今のおばあちゃんは…愛せてないんだから…」
「…昔のおばあちゃんだって、今のおばあちゃんだって、同じおばあちゃんじゃない?違う…?」
「……」
「…生意気言ってごめんなさい」
「ううん。優衣菜の…言う通りだよ。ありがと…」
「ちなみに、優衣菜は静香がおばあちゃんになっても、ずっと愛してるからね!」
「うふふっ…!嘘つけ。セフレいっぱいいるって言ってたじゃん?」
「そ…それはそれ!し…静香が優衣菜の事、愛してくれないから…」
「ふふっ…。大人になったら愛してあげるから」
「そんなの待ちきれないの!」
「あははっ…!せっかちなのは子供な証拠だぞ?」
「……」
「…優衣菜?」
「悔しいな。おばあちゃんは、静香にこんな…今でも愛して貰えてるんだもん。私なんかより、ずっと…」
「!」
「伝えにいった方がいいよ?…ボケてたって…頑張って伝えようよ?」
「…あなた、誰ってまた言われても…?」
「静香、大人のくせにだらしない!忘れられたんなら、もう一回新しく覚えて貰えばいいじゃん!弱虫!」
「……」
「ふん…!もう寝るから!(ガラガラ)」
「大人のくせにだらしない…。弱虫…か…。……弱虫だな。私も…私の家族も……。大人のくせに…傷つく事が怖いなんて…」
「…行こうか、静香。明日……」
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