八丈町デポジットは何を残したのか
《険しかった全島参加への道》
5年間続けられた八丈町デポジットは、ついにこの8月で終わることになりました。日本のゴミ問題の解決に一石を投じる画期的な制度として、全国から注目され、期待された事業であり、私たちも住民の立場でその推進に全力を尽くし、制度の継続・発展をめざしてきましたが、残念ながら果たせませんでした。島内外で協力して下さった方々、応援して下さったみなさんには大変申し訳なく、力不足をお詫びするしかありません。
継続できなかった理由はいくつかありますが、出発当初に全島参加を実現できず、その後もずっとこの問題を解決できなかったことが最大の問題でした。それでも自由参加方式のもとで島内の約半数の商店に参加していただいたこと自体は、とても意義深いことであったと思います。しかし、一部大手スーパーの不参加などで、対象商品の流通量のうち30%しかカバーできず、そのために止むを得ず採用した識別シールを貼付することも、参加店には大きな負担となっていました。もちろん、それは覚悟の上で事業を開始したわけですが、あくまでも全島参加にいたる過渡期の措置としてであったと思います。しかし5年間を経ても、全島参加への方向に進めていくことは、残念ながら実現できなかったのです。
《継続・発展を多くの住民が期待》
この制度の目的は環境美化、ゴミの散乱防止だけではありません。事業者自身にゴミ回収の責任を果たすことを求めていくことこそ、その最大のねらいでした。いくつかの商店は、シール貼りなどの負担があっても積極的にこの制度に参加し、流通業者としての誠意ある対応を示してくれました。また一方で、この制度に疑問を持ち、参加しなかった事業者の中にも、この制度を契機にして、別の方法でゴミ問題に対する事業者責任を果たそうとする動きが見られました。その意味でも、この制度を実施した意義は決して小さくはなかったと思います。
また、飲料メーカーに拡大生産者責任を求めていくことも重要なテーマでした。いくつかのメーカーはこの事業に関心を寄せて視察に訪れ、私たちとの話し合いも行われましたが、事業への協力を申し出るメーカーは現れませんでした。全島参加で、全住民、全流通業者が一体となってメーカーに要求していくことができれば、そのインパクトはメーカーが動かざるを得ない状況を生み出し、八丈町デポジットはまさに日本を変える大事業に発展し、ゴミ問題の究極的解決につながったのではないかと思います。そして、それを果たせなかった現実は、八丈町にとっても、日本にとっても惜しまれてなりません。
《消極的だった町の姿勢》
5年間続いた自由参加方式のこの制度のもとで、参加店にとっては、シール貼りの負担だけでなく、10円上乗せして販売することで生じる不参加店との競争力のハンディキャップも小さくはなかったでしょう。それでなくても不況の深刻化、観光の長期低迷の中で、全島参加への展望が開かれないまま、これ以上長きにわたって重い負担を負い続けることの厳しさは多くの参加店に共通していたはずです。
これまでに行われた住民や事業者の意識調査では、多くの皆さんがデポジットの意義を認め、全島で参加できないところに問題があることを指摘しました。そしてノンシールでの全島参加の実現を求める声が強く出され、私たちはそのための具体案についても積極的に提案してきました。しかし、この事業に反対する商店が一部でも存在するかぎり、強制力を伴う制度にしなければ全島参加の実現は不可能です。しかも、この事業を主導した前町長は再選を果たせず、むしろあまり事業の継続に熱意のない現町長のもとでは、反対する事業者への説得はおろか、強制力を伴う制度の確立など望むべくもありません。その間、制度を始めて半年後に、八丈町にこの制度を推奨した都知事は退任し、その後、都の財政補助は次第に削減され、平成14年度からは完全に打ち切られました。そして今、町にとっては管理型最終処分場の建設、そしてそのための中間処理施設の整備など、莫大な資金を必要とする課題が山積しています。
《メーカー責任の追求こそ課題》
デポジット制度が始まることによって、確かに住民の環境問題に対する意識は大きく変化し、結果として、ゴミの散乱が減少しました。そして83%を超える回収実績で、デポジット制度の比類のない有効性が実証されるなどの大きな成果を上げることが出来ました。しかし、ついに事業終了という、島内外の多くの皆さんの期待を裏切る結果になったことは本当に残念です。今回、デポジット終了を打ち出した町長に対して、デポ制度で実現してきたアルミ缶、スチール缶、そしてペットボトルの飲料容器についてのリサイクルの継続は約束させました。そのために、町はペットボトルの分別収集のシステムを新たに作ることになります。そして、私たちは今後さらに、そのほかの資源ごみについても可能な限りリサイクルしていくことを求めて行くつもりです。
しかし、それだけでは八丈町デポジットの最重要のねらいであった拡大生産者責任の追求の道が見いだせません。八丈町デポジットがついに果たし得なかったこの目的をどのように実現していくかが、今後の大きな課題として残されたと思っています。それはやはり、全国的な運動と連動し、連携したものでなければならないことが明らかになったのではないかとも感じています。 (小宮山 建)
デポジット事業は終わっても…
6月23日のデポジット実行委員会で、町はデポジットの終了を提案しました。私も公募委員として委員会に出席していましたが、町長は挨拶のあとすぐに退席。委員の多くから戸惑いと驚きの表情が読み取れました。そして担当者はこれまでの事業の経過と終了にいたる理由をなんと1時間あまりも説明したのです。
終了の根拠にしたのは、住民と事業者に対して実施したアンケート。しかし、役所まで持って行くというアンケートの方法にも、たった1.2%の回収率のアンケート結果を根拠としたことにも疑問が残ります。また、試行延長期間に何の代替案も示すことなく漫然と続けてきた町の責任も問われるべきでしょう。シール貼りや保管の手間を乗り越えて、先進的な取り組みに協力してきた事業者からも、町に努力と熱意がなかったことが指摘されました。しかし様々な課題をかかえたままこれ以上続けることにも限界があるという認識は、委員に共通していたように思います。
デポジットの功績
5年近く続いたデポジット事業は、当初から町全体に多くの議論を巻き起こしました。しかし、成果もありました。飲料缶ばかりでなくゴミ問題そのものに関心が向けられ、この議論をきっかけに循環型社会に向けた取り組みが始まったからです。民間の力でアスファルトコンクリート再生工場ができ、中之郷処分場搬入に対する規制が強化されました。観光協会では昨年「海の家」で食品容器のデポジットを実施し海岸のゴミ散乱を防ぐことに成功しました。また、町は9月からペットボトルの回収を打ち出しています。
対外的には「デポジット」という言葉を全国に発信し、八丈町の名を知らしめたことは大きな功績でしょう。視察やマスコミの取材はかつてないほどの多さでした。また、八丈町議会も国に対して全国法制化に向けた意見書を提出しました。
デポジットの未来
しかし、なおデポジットという言葉に拒否反応をもつ人もいました。でも、私たちの身近に、そして案外気がつかないところにデポジットは利用されています。たとえば劇場のオペラグラス、遊園地のベビーカー、ホテルの鍵などの貸出にはじまり、びんビール、JRのSuicaカードなどです。こうして、すでに私たちの暮らしの中に浸透しているのです。それは、完璧な回収が困難と予想されるものを確実に回収し、不法投棄や盗難を防ぐにはデポジットしかない
からです。
今、家電製品については消費者が処理費用を払って引き取ってもらいますが、不法投棄が後を断ちません。不法投棄された車や家電の撤去に自治体は多くの税金を費やしています。ボランティアのゴミ拾いで解決できる範囲をはるかにこえています。最近パソコンなども処理費用を上乗せして販売されることになりました。このようにこれからは、生産者が商品の回収まで責任をもつという販売方法に変わらざるを得ないでしょう。
今年、大分市内のサッカー競技場「ビッグアイ」で、会場で販売する飲料容器に再使用コップのデポジット制を採用しました。「観客席の掃除が短時間で済む」「環境負荷が極端に少ない」など、すでに顕著な効果が出ていて注目されています。一方、「会場内か近くに洗浄施設や保管場所が必要になる」など課題もあるようですが、Jリーグ会場全体への波及効果が期待されているそうです。今後、デポジットの株はあがりそうですね。
(奥山幸子)
八丈町シンボル事業としてのデポジット
多摩川のタマちゃんがデビューして、はや1年。人気にあやかってどこかの町では、町内のナントカ川に現れたナントカアザラシにナントカちゃんという名前をつけて、町をアピールしようとしました。そのうちいついなくなってしまうかわからないのに。
どの自治体も、自分たちのまちのPRには、涙ぐましい努力をしているようです。その意味で、八丈町がデポジットをシンボル事業にしたのは、他から見れば独自性に富む目の覚めるような選択だったと言ってよいでしょう。なにしろ国の環境政策を先取りしている上に、日本だけでなく、世界につながるテーマでもあったのですから。
町が事業者の負担を軽減するノンシール方式を検討すると言っていたので、前向きな姿勢に期待していたところ、今回、突然の終了宣言!うーん…。失うものの大きさを、もっと慎重に考えなくてよかったのかなあ。
振り返れば八丈町デポジットは、様々な問題を抱えていたにしろ、島のイメージアップに大いに貢献し、信頼も得てきました。日本でも次第に理解が深まって実際に採用される場面も増えていますから、八丈町の実績は、これからものを言うところだったと思います。
もしもみんなの協力で、ノンシール・全島化が実現できたなら、このシンボル事業は、またまた全国に発信され、一段と輝いたことでしょう。
開始当初、全店参加が見込めないために、やむを得ず自由参加でスタートしなければなりませんでしたが、その中で「参加しない自由」を選ぶこともできたのに、なんと約半数のもの事業者が参加。事業者にそっぽを向かれて計画が頓挫したところもあることを思えば、これはほんとうに特筆モノです。そうしてその後、黙々とシールを貼り続けた方々をはじめ島の人たちが、大変だったけど頑張ってきてよかったなあと、胸を張れるような施策が立てられるべきでした。頑張りがいがなければ、やっぱり頑張りきれない。応分の負担を果たしているという自負はあるにしても。
島にはいろんなことを考えている人がいるんですよ、と友人も言ってましたっけ。ほんと。その知恵を集めて、たとえば観光対策その他に、シンボル事業の有効性を積極活用できたら、またなにか新しい展開があったに違いありません。 八丈町デポジットは、単なるごみ処理システムを越えて、理念性が強かったといえるでしょう。それは、八丈町を将来どんな島にしていくのかという視野のなかで導入されたものでもあったからです。昨年末の議会で、まちづくりの理念を問われた町長さんの答弁は、「言葉だけで食べていけるか」でした。デポジット終了は、この線上にあるように思われます。
その町のもつ魅力のひとつに、町の姿勢や理念といったものがあって、近ごろ特に、若い人たちがそれに惹かれて移り住むというケースをよく聞きます。人口8000人時代に突入しそうな八丈島。いろいろな魅力を増やしていかなければなりません。
やめるに当たっては、少なくとも十分な検証をして、外部に対しても納得できる説明が必要でしょう。各方面からあれだけ注目されたのですから、八丈町には責任が生じているはずなのです。
いずれにしろ、今後、各方面から高い評価を受けたこのシンボル事業に続いて、八丈町に対する信頼を深めていける新たなイメージづくりが望まれます。 (角谷 和代)
ごみかんの皆様
八丈島デポジットへのご支援ご苦労さまでした。シール貼りや町民へのPRやラッキーデポジットなど頑張りましたね。
八丈島の環境を守るためにデポジット制度は重要なことなのですが、本来のデポジット制度と八丈島の制度は違いました。それは、ご存知のように自治体負担で行っていたことです。デポジットは受益者負担の制度です。作った人、売った人、買った人、その製品・商品で利益を受けた人々の責任で資源を有効に循環させる制度のはずです。八丈島だけでなく国内で行われているデポジットは自治体負担です。東京都が支援しないとなれば継続は難しいのかもしれません。
EPR(拡大生産者責任)・デポネットでは、生産者も責任を担う、受益者負担の、本来のデポジット制度の実現を目指しています。八丈島の経験は大変貴重なものです。これからも参考にさせていただきながら進めて行きたいと思います。
資源の少ない日本で、今のまま使い捨て社会を続けていくことは不可能です。ゴミを減らし資源として再使用を進めていかなくてはなりません。デポジット制度は資源として集めるために有効な手段だと考えます。
世の中が環境に目を向けるようになり、八丈島でデポジットを導入した時よりも観光客の環境意識も高まってきていると思います。ゴミがゴミでなく資源として集められるシステムが早急に作られるよう願っています。そしてすべての生産者、販売者、消費者が責任を持ち、次の世代のために資源を有効に活用するリユース社会を作るため、これからもがんばりましょう。私たちが何にも協力できませんでしたことを、深くお詫びいたします。
EPR・デポジット制度の実現をめざす全国ネットワーク 羽賀 育子
藍ヶ江を泥ヶ江にしたくない──寝耳に水の決定に反対
8月1日の全員協議会で、浅沼町長は、管理型最終処分場を「中之郷埋め立て処分場隣接地に設けたい」と宣言したという。
中之郷一住民とすれば、”寝耳に水”の話である。昨秋のタイムスでは全協の場で町長が当該地を「候補からはずしてほしい」と一部事務組合に要請し、土地所有者も「売る意志はない」とコメントしたと報じられた。しかも、昨年4月の住民総会以降、住民への説明は一度も開かれず、候補地としての「中之郷」は無くなったもの、と思いこんでいたのだ。
昨年の住民総会で出された質問でも、また今年6月に議長宛てに提出された田持組合の陳情書でも指摘されているように、候補地は安川、三原川から藍ヶ江に直結する流路の上流に位置し、大規模開発は水害や海の汚染の危険性が考えられる。また、集中豪雨が頻発する昨今、一組自体が「地盤支持力が弱い」と認める場所に5万mもの「ため池」を作って、崩壊の恐れはないのだろうか。これまでほとんど情報公開がされないままの、住民との合意のない決定は認められない。 (中之郷住民)
決定は議会軽視?
★ デポ終了にあたっての町のコメント――「デポ制度は一自治体レベルでは解決が難しい」。ン、今更?八丈島のデポ実施で、法制化は実現すると思っていた?まさか。八丈の熱意で思いがけなくメーカーが動くなど、よほど幸運な展開でもないかぎり、現状ではほとんど考えられない。東京都をはじめとする他の自治体や環境団体などとも連携し、粘り強く求めていくのでなければ。このコメントが、今まで八丈に注目していた人たちの目に、どう映るのか。★現在の島の世帯数、約4700。そのうちわずか53件(事業者分は別)のアンケート結果だけでデポに対する民意をつかもうとするのは、どうも無理のような…。町は「これが多いか少ないかは、皆さんのお考え」とした。★先ごろ開かれた臨時議会の後の全員協議会で、デポについて、「全員協議会で報告してやめるのは、完全な議会軽視。議会に方向性を示して論議しながら決定すべきだった」との指摘も。★デポに消極的だった町の姿勢から浮かんでくる町の行く末は?
すてきな島を
デポジットにこだわった「ごみかん」でしたが、元々はゴミ問題や環境問題を切り口にして八丈町政をよくしたいという思いが出発点だったと思います。実際に名乗りをあげたのは一九八八年三月。もうあれから5年の月日がたち、現町長によるデポジット中止の決定で、一つの時代が過ぎたという感がします。デポジットを、思ったように八丈島に根付かせられなかったことは残念ですが、島を良くしていきたいという本来の思いはしっかり根付き、枝葉を伸ばしはじめているように感じます。これからもまた具体的なテーマごとに同じ志を持つ者が集い、つながりあって、すてきな島を一緒につくりあげていきましょう。 (浜田光)

編集後記:ごみかんの歩み
2年近くのご無沙汰でした。町のデポジット終了決定を受けて、これまで町の事業を支援してきた「ごみかん」としても、私たちなりの総括をしておかねばと思いました。ごみかんは「八丈島のゴミと環境を考える会」ですが、ここ数年はゴミばかりに関わってきました。今回、管理型最終処分場の問題を加えたのは、最近持ちあがっているこの件についてぜひ一言発言したいという中之郷の住民の要望があったからです。これを機に様々な島の環境問題についても考えていきたいと思います。
なお、ごみかんでは2年前に、デポジットのパンフレット(カラーB6版8ページ)と私たちの活動記録(A4版40ページモ右画像)を作りました(無料)。ご希望のかたは、ごみかん事務局2−1600までご連絡下さい。
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