田んぼでカモを守る

片野鴨池の象徴ともいえるカモ類の保護活動の一部をご紹介します。

鴨池のカモが減っている!
  鴨池では、これまでに24種類のカモ類が記録されており、最盛期には3〜4千羽が飛来します(ガン類、ハクチョウ類除く)。もっとも多いのはマガモ、ついでコガモ、トモエガモと続き、それ以外のカモ類は多くはありません。

 一口にカモといってもその暮らしぶりはさまざまで、好む環境も異なります。カモ類は、大きくツクシガモ類、水面採食性カモ類、潜水採食性カモ類に分けられます。ツクシガモ類とは、くちばしで干潟の泥の中の生き物を食べているグループ、潜水採食性カモ類とは、水中に潜って魚や貝などを食べているグループです。

 鴨池に多いカモ類は「水面採食性カモ類」と呼ばれるグループで、マガモ、カルガモ、コガモ、などAnas属(マガモ属)のカモ類とオシドリ類を指しています。彼らは、水面や水中の餌を濾し取って食べるのに適したくちばしを持ち、河川や湖沼、水田で落ち籾や二番穂、その他の植物の種子を中心に食べています。
 鴨池では、水面採食性カモ類が減っているのです。

では、どうすれば良いの? 

鴨池に飛来したマガモの個体数
(ガンカモ類の生息調査、環境省より)


カモが餌を食べるのは、どこ?
 鴨池のカモが減った原因として、鴨池周辺に保護区が増えて分散したこと、鴨池周辺の餌場の環境が変わったこと、などが考えられています。ということは、鴨池のカモを増やすには保護区を減らすか餌場の環境を改善すればよいことになります。が、保護区が増えるのはいいことですので、餌場を改善することになります。
 カモの餌場を明らかにすれば、環境を改善すべき餌場の範囲が分かります。そこで、鴨池でカモを捕獲し、電波発信器を装着して追跡してみることにしました。発信器の電波を受信すると、スピーカーからは「ぼつっ、ぼつっ」という音が聞こえるので、その電波が発信される方向を頼りに、位置を特定していきます。

 見つけた餌場は、図のように鴨池から半径11キロ以内の加賀市内のたんぼであることが分かりました。
●印は、カモが餌を食べていた水田の位置を表します

 地図にして眺めると、なんとなく餌場の分布がかたよっているように見えます。あるたんぼでは、カモが30回も見つかりましたし、1回しか見つからなかった所もあります。鴨池の北東にある柴山潟や大聖寺川の周りでは、餌場が何カ所も見つかりましたが、加賀温泉駅の前などはたんぼが広い割にはあまり見つかりませんでした。どうやら好きなたんぼとそうでないたんぼがあるようです。

では、カモが好きなたんぼってどんなたんぼ?


カモが好きなたんぼは、どんなたんぼ?
カモが好むたんぼはどんな環境なのかを調べるため、農家の方に協力をお願いし、「1.何もしないたんぼ」「2.水を張っただけのたんぼ」「3.水を張らずに、餌になる籾をまいたたんぼ」「4.水を張って籾をまいたたんぼ」という4つのたんぼを用意して実験を行いました。
夜、それぞれのたんぼに餌を食べに来ているカモを数えたところ、カモは4のたんぼをとくに好んでいました。

 

 逆に、餌があっても水がないたんぼにはカモは飛来しませんでした。この結果から、カモにとっては、たんぼに水があること、ついで籾のような餌が豊富にあることが重要であると考えられます。


 そこで、鴨池のカモの個体数と、餌場である加賀市内の乾田化されたたんぼの面積を比較してみると、乾田化が進行するにつれて、カモが減っていました。鴨池のカモが減ったのは、餌場として好まれる水のあるたんぼが減って、餌を食べられなくなって他の湖沼に移動してしまったからのようです。とすれば、たくさんのたんぼに水を張れば、カモを増やすことができるかもしれません。


ところで、どうやったらそんなたんぼが増やせるの?

それぞれのたんぼに来たカモの数(最大)。
カモのイラスト一つでカモ十羽です。


そんなたんぼを増やすために・・(1)

 〜「加賀の鴨米ともえ」の取り組み〜

 鴨池のカモ類減少への対策として、冬の間、たんぼに水をはり、水鳥たちのエサ場づくりに取り組む農家の方がいます。この農家の方の活動は、1996年に始まりました。

 農家の方は、カモが餌を食べやすいように11月から2月までのあいだ、たんぼに水を張り、餌になる籾をまきます。

 夜になるとカモなどがエサを食べに飛来し、籾と一緒に雑草のタネを食べ、そして糞をします。すると、翌年の稲作で除草剤や肥料の量を減らせるのです。実際に、「加賀の鴨米ともえ」を作っているたんぼでは、除草剤の量は通常の半分に、肥料も半分にしています。こうして、コシヒカリ100%のおいしい減農薬米が作られます。このお米は、土壌分析や試作を経て、2001年から一般への販売を開始しました。

 このような、人にも自然にもやさしい稲作が全国的に注目を集めています。

 

たんぼに籾をまく農家の方(写真:大畑孝二)
※加賀の鴨米ともえは、市民ボランティア「鴨池観察館友の会・鴨池たんぼクラブ」で販売のお手伝いをしています。鴨米の販売についてはこちら


そんなたんぼをふやすために・・(2)

  〜片野町・下福田町に出現した一週間の「ふゆみずたんぼ」〜
 2004年〜2005年の冬にかけて、鴨池の将来を考える「片野鴨池周辺生態系管理協議会」の一環として、地元下福田町の有志のみなさん、片野町の生産組合のみなさん、あわせて14件の農家の方にご協力いただき、一週間のふゆみずたんぼ活動を始めました。総面積はおよそ3ヘクタール。水を張る期間は一週間と短いのですが、電波発信器を使った調査ではカモが同じたんぼで餌を食べる期間は平均2日、最長で4日。そこで、一週間でもカモの餌場になるだろうという予想で開始しました。

 今回の試みでは、水を張る期間が短い代わりに、少しずつ水を張るたんぼの位置を変え、小さい面積であっても、いつもどこかに水がたまっている、という状況を作りだしました。

 2005年1月までに、ヒシクイ、マガモ、カルガモ、コガモの飛来を確認しました。このようなたんぼが増えていけば、カモの餌場が十分確保され、鴨池のカモが増えるかもしれません。

 今回の水張りでは、冬の北陸でたくさん降ってくる「雨水」に注目しました。揚水ポンプで水を汲み上げられなくても、水戸を閉めておけば水を溜めることができます。

 レンジャーは農家の方への説明会などを実施し、より多くの方のご参加をお待ちしています。ほんのちょっとのあいだだけ、カモたちのために雨水を溜めていただけませんか?

稲刈りの終わったたんぼに水を入れる。加賀市下福田町にて。

■「一週間のふゆみずたんぼ」にご協力くださったみなさん(敬称略)

下福田町:谷博昭、谷幸男、高田照英、山本幸二郎

片野町:片野町生産協同組合