超手抜きスイーパ
簡単な割に実用性充分です。

ja1cvf  1001

スペアナは手に入れましたが
トラッキングジェネレータを買えなかった。
悔し紛れの作品です。

スペアナ(スペクトラムアナライザ)を買ってもTG(トラッキングアナライザ)を買えなかった。
もうずいぶん昔のことになります。
これでは価値がないとまで云われそうですが、いくらガンバッテも、使い込む程にその「価値がない」という意味が分かってきます。
それでも買い換えるお小遣いはありません。

高価なスペアナに対抗すべくTVチューナを使ってスペアナもどきを作ったこともあります。 それなりに使えますが当然のように限界がありました。
最近はそれを乗り越えた素晴らしいスペアナキットがあります。そしてそれはTG付なのです。

私の持ってるスペアナはTR4133Aと云う私にとってはオーバスペックなものでさらにTGを買う気にはなれません。
短波帯のローパスフィルタを作りたいだけなのですから。
*私のTR4133AはTGに対応しません。

でもスペアナがあるからこんなモノ割と簡単に作れます。

今何をしたいの!

以前14MHz帯、21MHz帯のローパススフィルタを作ったことがありました。
今度は50MHz帯のローパスフィルタを作りたいのです。
前回は友人のスペアナ(TG付)を借りて仕上げたのですが、その頼みの綱は50MHzには対応しません。
フィルタは手探りで作っても満足できるものにするのは不可能に近いのです。
スペアナとTGがあるとスペアナに同期した信号源でフィルタの特性やアンプの特性が簡単に表示できます。 『周波数特性の表示』これが最大の特徴です。

TGは難しいのか

スペアナの帯域全域(理想です)にわたって同期した信号を発生させなければなりません。 さらにそのレベルは平坦でなければなりません。これは大変なことです。
実は私のTR-4133AはTGを接続する機能も無いのです。つまりTGは使えないのです。

ここで諦めては話が進みません。何とかならないのでしょうか?

・全帯域の信号は必要か?
TR-4133Aは私がマイクロウエーブに熱を注いだ頃に手に入れたもので当時としてはとても広帯域のスペアナです。 今回の目的では100MHzまで信号があれば充分です。
・同期してなければダメなのか?
これは微妙な問題ですが私のスペアナにはメモリ機能がありますのでそれを活用すればクリアできます。
*アンプやフィルタを通す前と後との出力をメモリして比較すれば真の特性を知ることが出来る。
メモリ機能が無くても信号レベルが平坦なら問題ありません。
同期してないと一回のスイープでその特性を表示できませんが何回かスープを繰り返すことにより全体の特性を表示できます。
ちょっと時間が掛かる(数秒)だけです。
と云うことは、「100MHzをスイープできる発振器を作ればよい」のです。

 

 

*このスイーパは表示にスペアナを使うことを前提にしていますのでスペアナがないと使えません。

色々試行錯誤結果考えたのはこんなものです。
同期させることは諦めてますので、徹底的に手抜きをして簡単に作ることを主眼にに置いてます。部品の殆どがジャンク品の寄せ集めです。
そのため敢て部品定数など記入していません。こんなことが出来るというアイディアとしてご覧下さい。

信号源の発振器は移動無線機などに使用されたVCOです。 これが一番重要な部品です。以前は秋葉原にゴロゴロしていたのですが最近は品薄です。
VCO-Lの最高周波数とVCO-H最低周波数が重なっています。これがポイントです。
VCO-Lの周波数でスイープのスタート周波数を決定します。 VCO-Lの周波数を最高から最低まで変化させるとスタート周波数はほぼ0MHz〜100MHz程度まで選択できます。
VCO-Lが固定されてるなら特定周波数で100MHzの幅を持つスイーパとなります。
VCO-Hは10VのAC信号を整流して脈流のままチューニング端子に加えています。100MHz以上のシフト幅が取れることが目標です。 シフト巾が狭い時は電圧を高くすれば広くすることが出来ます。ただし無闇に高電圧を掛けると内部のバリキャップダイオードが壊れるかも知れません。 安心のために可変抵抗の後に100kΩ程度以上の抵抗を入れておきましょう。
*内部に保護回路が入っていることもあります。またノイズ防止のため大きめのコンデンサが入ってることもあります。 大きなコンデンサが入っているとシフト幅に影響することがあるかも知れません。
普通の使い方ではありませんので多少のリスクはあります。
またVCOの出力は6dBm位無いと次のDBMがうまく働きません。
今回使ったVCOの電源電圧は8Vでしたが9VのSW電源にダイオードを入れて電圧を下げています。
出力側の3dB-ATTはお呪いのようですがチップ抵抗を組み合わせて(300/18/300)作ってみました。
お呪いですから無くても動作しますが後に繋ぐものに影響を与えないため重要な働きをしています。
この理由についてはnet上に沢山解説されてますのでそちらをご覧下さい。

スイープ信号にACの脈流をそのまま使うことに疑問を感じる方も多いと思います。
10V50mAの小さなトランスがありましたので安易にダイオード入れて脈流にしてそれでスイープさせます。
脈流ですからリニアな変化は出来ません。たとえリニアに変化しても周波数はリニアにシフトしません。 その変化がどうであろうとスペアナ側から同期信号を貰わないので同期しません。
しかし時々一致する対応周波数ではスペアナの管面上では正しく見えます。 スペアナ側のスイープ周波数とのズレがうまい具合にスイーパ全域の周波数に対しレベルを表示してくれます。
面倒な鋸歯状波は不要と「手抜き」しました。
もう一つダイオードを使って、こっちはリップルフィルタを入れてVCO-Lのチューニング用です。リップルは周波数変動に成ります。
このトランス、私に好きなタカチのケースにピッタリなので使用しましたが他のことは何も考えていません。

DBMも手持ちのジャンクです。使ったのは大型の8本足ですが4本足のものもあります。 こんな小さい部品でもメーカによってPINアサインは違うようです。
構造を考えてみますと、IFはグランドとの間にダイオードが入りますので抵抗があります。 RFやLOは対グランド間は0Ωこれを念頭に他社製品のカタログ見ながらやってみたら何となくうまく行ってます。 RFとLOはレベルが小さい方をRFに使うのが減速です。今回は殆ど同じレベル、あまり追求していません。

3dB ATT(パット) 出力のコネクタにピッタリ貼り付けチップ抵抗で作ります。
両面基板がなかったので裏に銅箔テープを貼ってますがラインの太さもすべて手抜きのいい加減。 使用周波数が200MHz程度までなのでいい加減に作っていますが本来手抜き禁物です。

電源コードは、たまにしか使わないこのようなアダプタには邪魔なのでメガネジャックを使って接続します。
最近ACコードのコネクタとしてどうやら定番になったようなので採用しました。それにしてもメガネジャックを置いてる店は殆どありません。

可変抵抗のつまみ 大掃除した所ストック部品の多くが行方不明になりました。桜の小枝で作りました。 カッコ良いというか、手抜きというか。

たったこれだけのものですから組み立ては簡単です。しかし部分的に1GHz及ぶ周波数を扱っています。
高周波に対する配慮が必要です。
今回は基板は作りませんでした。 本来は片面ベタアースの両面基板でストリップラインによる配線も考慮するべきですが、 各部品のケースを直接ハンダ付けして空中配線で済ませてしまいました。
これも手抜きですが出力は思ったより平坦で充分なパワーもありました。 それを良いことにアンプも入れていません。広帯域アンプなんて作る自信がありませんから。

お試しになる時は配線や組み立ての手抜きが周波数特性に大きく影響することを念頭に実験されて下さい。

中身はこんな感じ

右側、黒い箱がSW電源9Vです。ちゃんとモールドされて安心感があります。 これはACアダプタの本体部分を組み込んでしまいました。
それなら外付けでも良いんじゃないの。今回は50Hz交流信号が欲しいので100Vを引いてます。
黄色いのがトランスで10V・ACを取り出してます。右上の黒いメガネジャックにACコードを接続します。電源SWは付けていません。
すべてを賄えるトランスがあればこんな厄介なことをしなくて済みます。

中央が本命スイープ回路・拡大します。

出力コネクタ(右上)に付いている小さな基板はパットと呼ばれる3dBのATTです。
これはインピーダンスの乱れを他に影響させないための手段です。

最近ジャンクのVCOユニットはあまり見かけません。

左側の3点がVCOです。いずれも900MHz付近を発振します。今回は中央上のものを使いました。
右側はDBMです。
メーカのカタログでは色々ありますが安く買えるモノは限られます。
今回の目的のような場合それぞれのVCO周波数差が100MHzシフトが出来れば同じように遊べます。
差が小さければ帯域が狭くなるだけです。

これを使って実際に見た画面

以前作った21MH用のローパスフィルタです。波形の左上の部分に注目して下さい。波打ってますね。
3dBのパットを入れてません。この時の全帯域写真を撮りますれました。

3dBパットを入れると綺麗になりました。全体のレベルも3dB落ちてます。
3dBパットはチップ抵抗を300-18-300の組み合わせでπ型に並べて作ったATTです。写真が小さくて判らないですね。(済みません)
いずれにしても高周波関係の回路は必要以上に大きく作るのは得策ではありません。

3dBパットを入れてスペアナに直結した時の全帯域特性です。

低域で多少のレベル落ちがあります。これを知った上で使うなら問題ないでしょう。

フィルタなど作る場合目的周波数の3倍位まで見えると安心感があります。
回路構成によりHIPやDIPが発生する場合があります。

455kHz付近は観られないか?

良さそうですが分解能が上がりません。 この写真中心周波数はそれらしい所にありますがX軸メモリは100kHzです。この付近では私のスペアナでは2kHzがやっとです。とても使えないですね。
適材適所低い周波数に対応するようなスペアナ、発振器などで無いと対応は難しいですね。

使ったケースはタカチのTM-80 あまりにもピッタリでそのままでは使いにくいのでカバーの一部を切り離してサブパネル化して使いました。
完成写真に切れ目が入っているのはそのためです。
切れ目が気になる方も居られると思いますが組み立てはとても楽になりました。

後側、よく見えないですね。
ACコード用のメガネジャックが付いてます。
たまにしか使わないものなので邪魔なACコードを外せるようにしました。パソコンなどのコードと同じコネクタです。

先日大掃除をしましたら部品が大量紛失しています。ゴミとして捨てられたようです。
可変抵抗に付けるつまみも無いので桜の小枝で作ってみました。
ニスを塗って乾燥中!

 

スペアナ持ってないのですがオシロスコープで代用できませんか?

このアダプタはスペアナの機能を利用していますのでそのままでは無理です。
1: スイープ信号を鋸歯状波にしてオシロスコープのX軸に入れDBM出力をY軸に入れれば見ることは可能です。
しかしVCOは周波数がVt電圧の変化に対しリニアではありませんので周波数マーカなど付けないと周波数を読み出すことが出来ません。
2: 現実の問題として出力信号を対数AMPを通すなどしないと大変見づらいものになります。
秋月の電界強度形キットなどが利用できるかも知れません。試したことがありませんので実際には判りません。
http://akizukidenshi.com/catalog/default.aspx
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-00034/

 

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