校正が簡単な照度計

☆作るのがめんどうな人はテスタで照度計が作れます。

ja1cvf  0804


LEDを照明に使う実験をしているとホントに明るいのか暗いのか?
目の感覚は鈍いと云うかオートアイリス?がよく効いているのか?
明るさの変化はよく判らないことがよくあります。
いろいろな光電素子がたくさんある中、照度計の自作はできないだろうか!

光量・明るさを測るモノとして、 身近なところではカメラの露出計がありますが最近はカメラが進化して露出計なんかほとんど見かけなくなりました。 (と云うことは身近ではない?)
市販の照度計は正確そうなモノは数十万円、簡単な怪しげなモノで数千円ほどです。
実際にテスタ(回路計)などに付属している簡易型を比べてみるとチョットした計り方の違いで その結果は大幅に変わり正確な測定は難しいモノであると同時に簡易型照度計は怪しいモノも多いことが判りました。
*測り方、光源の種類による影響を受けやすい。
構造は簡単でセンサとその出力をメータで読むだけです。
これなら作れるかもしれない・そんなわけで簡単な(簡易型)照度計を作ってみることにしました。

照度計を作るには一般的に光電素子と呼ばれる光量を電気量に換えるセンサが必要です。
フォトダイオード、フォトトランジスタ、cds、太陽電池などがありそれに電流計などを組み合わせると 明るさ(照度)によりメータが振れますから照度計の可能性が見えてきます。

しかし、作り始めて気がついたことは 光:電流 が、リニアではなく目盛りを付ける付ける段になって困ってしまいました。
まず基本となる正確な照度計が必要になります。これがないと相対値は判っても絶対値を読み取る照度計は作れません。
小さいソーラパネルと電流計を組み合わせて明るさの比較を出来るモノを作っては見ましたが照度計とは云い難いモノでした。 明暗比較器と云うレベルです。

光の単位は?
cd カンデラ 光度
ケルビン =色温度
Lm ルーメン 光束
lx ルックス 照度
Ra アールエー 平均演色評価数
等いろいろありますがこれらについて私自身よく理解してるとはいえず説明は省略させていただきます。 詳細は専門書などでご確認下さい。
また測定方法などにおいても不適切な方法もあるかと思いますが簡易型、 目安計として使用する目的を限定しておりますのでご了承下さい。

絶対値を測れるモノを作ろう!

都合の良いセンサを見つけました。
メーカのカタログでは良いモノがあってもそれを買えるかどうかは別です。

S7565・フォトICダイオード(浜松ホトニクス株)
これは秋葉原で見つけたモノです
照度に対しリニアに変化するセンサで1000lxの光電流が320μAと規定されています。
しかしこのセンサは参考資料によるとバイアス用の電源が必要です。

使用回路例はカタログからコピーしたモノですが私の実験では負荷抵抗として100μAの電流計+分流器を使用しています。 バイアス電源としては3V〜12Vであれば良いのですが9Vの006pを使用しました。
電池の場合電圧変動による指示値の変化が気になるところですが3V〜10Vの変動で指針の変動がほとんどありません。
*追試の結果電池電圧が低い場合負荷抵抗を小さくすることによりリニアな動作が可能なようです。
このICの使い方について
「Chappy&GardenDIY」 さんから使用上のヒントを頂いております。誌上を借りてお礼申し上げます。

早速このセンサを使って簡易照度計を作ってみることにします。
照度計としてはどの程度の明るさを計れることが必要でしょうか?
別掲の資料によれば一般生活シーンでは1000lxまでの場合が多く晴天の太陽光などでは10万lxにも及ぶことが判ります。
対数表示の出来るアンプでも使わない限り一つのメータでは表示が困難です。
これらのことを念頭に具体化を考えてみましょう。

回路は簡単です。

電池は単3-2本でも良いのですが006pにして取り外し可能にしてあります。
その理由は私の場合、照度計を使うシーンはそれほど多くないので電池入れっぱなしでは液漏れの心配があるからです。
分流器は可変抵抗を使っていますが安定度のことを考えると好ましい選択ではありませんが 電流計の内部抵抗は製品により違いがあり正確な分流器を作ることが困難であること、調整がしやすいことを優先させています。

一応測定器ですから校正が必要です。
電池の片側を外してテスタの電流計を入れ風のない曇りの日の窓側室内で電流計が320μA示すように測定場所を移動します。 そこで1kΩのVRを調整し100μAのメータがフルスケール(1000lx)になるように合わせます。
次にSWをONにして100μAのメータが10μを示すように500ΩのVRを合わせます。
これで1万lxまで測定できるようになります。
この作業は100μAのメータに分流器を入れて320μA、3.2mAのメータとして使えるようにするモノです。 この様な所に可変抵抗を使うのは前述の通り安定性を考えると疑問ですが簡便な方法として採用しました。
この調整はカタログの表示データを信じての作業です。
実際には製品のバラツキがあり1000lxの時、カタログ上で平均値が320μAで最小240〜最大400μAとなっていて 30%くらいの誤差が出る可能性を持っていることを頭に入れておく必要があります。
しかし最近の製品はかなり良いモノが多く中心値に近い製品が多いことを期待しているわけです。
もし正確さを望むなら別途比較用照度計を用意して校正する必要があります。


メータは100μA電流計、左上にレンジ切り替えSW
センサマウントはフイルムケース利用・反射防止黒着色
ケース下部に電池スナップ006p用

最初の調整で1万lxまで測定測定できることになりましたが【照度と明るさの目安】の表を見ますと10万lxまでの必要性を感じます。 実際に屋外では10万lxでも頻繁に振り切れます。
10万lx用にもう一つSWを入れてもよいのですがその場合ICの最大定格を超えることが判りました。
そこで考えたのが遮光フィルタを付ける方法です。
フイルムケースを利用した帽子のようなものです。乳白色のプラスティックのフィルムを重ねて入れてあります。(色温度を考慮したモノではありません)
帽子を外して1000lxの時帽子をかぶせて100lxと表示されるようにフイルムの厚さなどを調整します。これでSWをX10側にすれば10万lxまで測定できます。

標準的な露出計SEKONIC MicroLeder

銀塩カメラ時代、写真好きには必携品でした。
今はほとんど見かけません。
照度計制作の参考資料としてja1hcf武内さんから頂きました。


センサにX10フィルタをかぶせた状態です。
このフィルタと倍率SWを使い分け
10lx〜10万lxまで測定できます。

フィルタの問題点
本物?は半球型の帽子を使っています。
ここで使った山高帽の形状では入射角によりフィルタ効果が均一でなく誤差が加算されます。またフィルムの色も誤差の増加に繋がります。 これらの条件に適合する素材を正確に選択することは困難と考えました。
そのためフィルタのX10レンジは目安程度のモノとなっています。

カメラに使う露出計を参考に調べてみました。
友人から頂いたSEKONICの露出計はフィルタでなく絞りが付いています。
入射口の大きさを変えて感度を調整してるのです。
私もこの方式を採用する予定でスタートしたのですが露出計と照度計の違いに気がつきフィルタ方式としました。
露出計の場合、前面被写体の明るさ(反射光)を測定します。側面からの光は無用な場合が多いのです。 それに比べ照度計はその面の明るさを測るため全方向からの光を受光面に入れる必要があります。
山高帽型フィルタは角部分の遮光性が強くなりがちで、時によりセンサに対し影を落とすことにもなり大きな誤差を生じています。 半球の帽子は入射角による誤差はなくなりますが半球型のフィルタを作ることが難しく断念しました。
絞りの形状、電気的回路のを工夫することにより全く不可能ではないと思いますが難しい工作を強いられます。

-----------***----------

照度と明るさの目安
引用:大阪市北区中之島 大阪市立科学館ホームページ・こよみハンドブック2006〜2008年
照度(ルクス)  明 る さ の 目 安      (ルクス)
100,000 ・雪山・真夏の海岸        
・晴天昼太陽光        
・晴天午前10時太陽光      
・晴天午後3時太陽光      
・曇天昼太陽光         
・曇天午前10時太陽光      
>100,000
100,000
65,000
35,000
32,000
25,000
 10,000 ・曇天日出1時間後太陽光      2,000
  1,000 ・晴天日入1時間前太陽光     
・パチンコ店内          
・百貨店売場         
・蛍光灯照明事務所      
・日出入時              
・30W蛍光灯2灯使用八畳間      
・夜のアーケード       
1,000
1,000
500〜700
400〜500
300
300
150〜200
    100 ・街灯下            
・ライター@30cm            
50〜100
15
     10 ・ロウソク@20cm         
・市民薄明(太陽天頂距離96度)      
10〜15
      1 ・月明り            
・航海薄明(太陽天頂距離102度)  
・天文薄明(太陽天頂距離108度) 
0.5〜1
0.01
0.001

*校正に曇りの日を選んだ理由
天気の良い日は1000lxを超える状況が多いことや周りのモノの反射により照度が変化しやすいことを考えると 風のない曇りの日は明るさが安定してるように思います。 近くに動くモノがある場合は要注意です。

【メータをテスタ(アナログ)で代用できないか?】

カタログにあった使用回路例はテスタを抵抗計にしたときと同じように見えませんか?

テスタは電池とメータを組み合わせて抵抗計として使っています。私の目には全く同じに見えましたので実験してみました。 結果を先に云うと目安程度なら使用可能です。
しかし抵抗計の場合どんなに光が強くても抵抗ゼロの位置より大きく振れることはなく飽和します。 テスタの内部抵抗の影響でリニアな動作をしなくなり無調整照度計として使える範囲は限られます。
私が実験に使ったテスタの場合電池は1.5VでX100の抵抗レンジでフルスケール750μA(LI目盛りを見る)の電流が流れます。 LIが320μになる所は2.65kΩあたりです。
ここが1000LXになるのですが250Vレンジの100Vがそれに近い値を示しています。 と云うことはこの目盛を10倍して1000LXと読み替えても大きな違いにはなりません。
誤差を覚悟の上 別基板で作ったセンサをテスタに付ければおよそ1000lxの時ここまで針が振れます。 しかしこれが使えるのは先ほどの理由・電池電圧が低い、内部抵抗が大きい等の理由から全目盛りの1/2位までです。

残念ながらこの様なテスタはあまりないかもしれません。

テスタに右図のような接続アダプタを作って見ました。
これで部屋の明るさを測ってみましょう。写真では確認しづらいと思いますがほぼ同じ値をしましています。
しかしこの様に簡単に読み替えできるテスタを探すことの方が難しいかもしれません。

LI目盛
テスタを抵抗レンジにしたときその回路に流れてる電流を表示するメモリです。 残念ながらすべてのテスタにこのメモリがあるわけではありません。
テスタにLI目盛りがないときはどうしましょう。これを知るためには抵抗計の目盛中央の値に注目します。
私が使ったテスタは1.5Vの電池で抵抗目盛の中央は20となっておりX100レンジでは2kΩです。
この中央の目盛がこのレンジの内部抵抗を示しています。
フルスケールの電流は内部抵抗と電池で決まります。電流が半分になると云うことは内部抵抗と同じ値の抵抗が接続されたことになります。
このことから中央の電流は1.5V÷(2k+2k)=375μA(フルスケールの半分)です。 指針が2kを示すと云うことは測定端子に2kの抵抗が接続されたことになりますから2k+2kとして計算します。 測定端子が0Ωならフルスケールになり750μAです。

【こんなモノ見つけました】

NJL7502L 2ヶ ¥100

実はこの照度計を作るまでいろいろな光電素子を探していたのです。
前にも書いたとおり各メーカで良いモノはたくさんあるのですがそれを手に入れられるかが問題のです。個人であったり業者やメーカであってもガレージOOとか四畳半OO(最近使わない言葉ですが)と云われる規模ではほとんどの場合手に入れることが出来ません。
それでも最近はインターネット通販で販売している部品メーカが現れるなど情勢は違ってきてはいますが、基本的には部品の入手は困難です。
そこで力になるのが秋葉原などの部品屋さんです。秋葉原の部品屋さんの多くは正規品以外にデモノ、投げモノ、いわゆるジャンクを扱っているのです。これが私みたいな遊びの世界で楽しむ場合大きな力になります。今回使った S7565 も出所はそのようなルートです。そしてこの照度計が完成してほっと一息、目にとまったのが NJL7502L と云うチップです。これは S7565 と同様に使えるセンサです。お値段は2ヶ\100。
S7565は1ヶ\500です。 仕様は若干バラツキが多いようで一点調整という点では誤差が多くなるかもしれません。それでも同じように作ることが出来ます。

そして販売店も同じだったのでチョットショックでした。購入先は秋月電子通商。ここでいつまで販売してるかは?マークです。
これだから秋葉原散歩はやめられないのです。

☆DIY作品集【Quick Menu】 はこちら!

《ホームページ・表紙へ戻る》