水準器(水平器)の修理
新たな挑戦・別の水準器を調整しました。

ja1cvf  0907、1002、1005

 

その1 良く判らずやってみました。 上手くできたつもりでしたが失敗談です。

 

調整の出来た水準器です。
水準器を左右反転180度廻しても気泡の位置が同じでなければいけません。
何回もやり直してやっと同じ表示になりました・・・しばらくして、やはりおかしい!

おなじみの気泡管を使った水準器です。水平器と呼ばれることもあるようです。

中央が少し高くなった細いガラス管の中に水と小さな気泡を入れると気泡は一番高いところに留まります。 そのきほうの位置を見ることにより気泡管の置かれたところの傾きを知ることが出来るモノです。
建築物や土木工事、機械の据え付け、工作物の歪みの確認など簡単な装置ですが重要な測定器です。

解放水面は水平で閉じこめられた気泡は傾斜があった場合高いところに登るという 自然界の法則に基づいたものなので簡単な割に精度の高いモノが作れます。

【 右向きと左向きで指示が違う 】

この水準器は古道具屋で手に入れた中古品です。 構造はしっかりしていて安心して使えると思っていたのですが使っているうちに「コレは怪しい」と思うようになりました。

どうしたらこの怪しさを見破ることが出来るでしょう。
同じ場所測定する時、水準器を左右180度反転して測定すればそれが正しい時には同じメモリを指示するはずです。

予想通り左右でひとメモリほど違います。コレでは正確な水平は確認できません。
調整しなければ使うことが出来ません。
ひとメモリがどれだけの傾度であるかは気泡管の造りで決まってしまいます。
安定な作業台で左右反転しても同じ表示をするように気泡管の固定を補正すればよいのです。


カバーを外して接着された気泡管を取り出します。

気泡管の取付部分を解体してみると調整機能など無く、簡単に接着してあるだけです。 接着部分が外れている訳でもなくキッチリしています。
と云うことはこの水準器の精度は見かけによらず低いモノなのでしょうか。
ここまで来れば無駄な努力なのか、やってみるしかありません。
気泡管の回りの接着剤を丁寧にはがします。無理な力が掛かれば簡単に割れてしまいます。
接着剤は経時変化のためか簡単に剥がれます。


心臓部の気泡管
まっすぐに見えますが中央が高くなっています。

綺麗に古い接着剤を取り去り新しい接着剤で気泡管をしっかり固定すれば完成なのですが 手元にはあまり適当と思える接着剤がありません。
おや!と思われるかも知れませんが木工用のいわゆる「木工ボンド}を使うことにします。
コレは硬化後も弾性を持っておりガラスとの接着力は弱いので失敗した場合のやり直しがしやすいと考えたためです。
気泡管の下に少しだけ接着剤を付け仮留めします。
接着剤が乾いたら気泡管を少し指で押し動かせることを確認します。

つまり仮留めした状態で少しづつ調整しながら固定しようという考えです。
この水準器は1m換算で一メモリ1cmの傾斜を見ることが出来るようです。特別高精度品では無いようです。*高精度品には気泡管の位置補正機能が入っているモノが多いようです。


気泡管とカバーが当たらないようにスポンジを挟んで仮留めします。
最終的にはこのスポンジは捨てます。

なるべく水平で安定した作業台を用意しましょう。
作業台は別の水準器で水平を確認出来れば良いのですが多少の誤差はかまいません。
作業台に調整中の水準器を置く位置の印を付けます。作業位置がずれると作業台の傾度が変わる可能性があります。 完全水平の作業台があればこんな心配無用です。

気泡管の両端と本体の間に木工ボンドを一滴落とします。
気泡管を中央に置き、水準器を左右180度回転させながら同じ指示になるようにします。
接着剤は乾燥すると縮むため一度に沢山の接着剤を使うと乾燥後狂ってしまいます。
気泡管ケースにたっぷり接着剤を入れてしまうと、失敗した場合再調整が出来なくなる可能性があります。
それを防ぐため何回も根気よく調整を繰り返します。
3〜4回調整してOKかと思ったのですが24時間放置後、検査したらしっかり狂っています。

【 この方法は失敗です・やり直しです 】

いろいろ考えて見つけたのが「木工パテ」です。
コレは木部の傷や節穴などに詰めて穴埋めするモノです。
何で木工用を使ってるのと、疑問に感じるかと思いますが手元にあったため、それと接着強度が弱いために完全硬化までに何回も調整可能であると考え採用してみたのです。
コレは乾燥縮が少ないので上手く行くかも知れません。一縷の望みを持ってやってみました。
作業手順は前回同様です。
穴埋め作業では乾燥縮はほとんど感じないのですが結構チジミがあるようです。時々修正します。 完全に硬化するとかなり硬くなりますので修正が難しくなると思います。


乾燥縮は少ないと思ったのですが誤差を少なくするのは至難の業です。


どうやら本体の水平と気泡管の水平が
合ってきました。

気泡管を固定し直すのは想像以上に大変でした。
水面に浮かぶ気泡が高いところに行くことは大自然の定理ですから難しい測定器もナシに調整できるのですが 実際にはその難しさを改めて感じました。

結果的にこの方法は失敗でした。

気泡管の固定は石膏で固定するようです。石膏は水を混ぜて放置すれば固まるのですが、後日水をしみ込ませれば接着が緩み気泡管を外すことが出来るのです。
また、石膏の特徴として乾燥収縮が少ないことも目的にかないます。
気泡管の位置を固定するのは至難の業で何回もやり直しが続きました。結果としてこの水準器はまた狂いが出ています。木工パテなどを使ったため気泡管がしっかり固まって外すのに苦慮しております。

その2 面白い水準器を手に入れました。とても高精度のようですが壊れています。再び修理に挑戦です。

 

これは見慣れない形です。

私も最初に見た時水準器だとは思いませんでした。
傾斜計というのが正式な呼び名のようです。

円形のつまみを廻すとシリンダがまわり傾斜角を読むようになっています。
メモリは
0度から45度まで1分刻みで書き込まれています。小さい一メモリが1分です。

写真が判りにくいですが上部シリンダの左側にある気泡管が傾斜角に対し垂直を見るモノ。今回はこれの修理です。
フレームの中に置かれた大きい気泡管が中央を示した時のシリンダメモリが傾斜角になります。
ゼロのときは当然水平となります。

一般的な水準器は一メモリ1/100程度です。これは勾配100mmで1mmの傾斜です。角度に直すと0.6度(36分)です。
今回の傾斜計は最小メモリが1分ですから36倍の感度と云うことになります。
精度の高い水平な台をを用意したいのですが適当なモノがありません。
取りあえず定盤を用意しました。これは高校生が実習用に作ったモノで精度が良いとは思えませんがこれしか有りません。

この定盤を水平にするため四隅にタップを立てネジを廻して水平を出すことにします。

手持ちの水準器総出で水平を調べましたが、並べて使うと微妙に違います。何となく平均的な表示を見て水平と見なします。

壊れた気泡管は上部のモノです。
ネジで固定されてますので簡単に外れます。中の水は完全に抜けて気泡管の肩の部分にクラックが入っています。
取りあえず封止部分を切り取り水を入れシリコンのシール剤で封止したのですが一週間程度たつと気泡が大きくなっています。密閉されてない証拠です。
その@は気泡管そのものは壊れてなかったのですが今回は気泡管を直さなければなりません。

そんなことを話していた時net仲間のヒデさんから掲示板に書き込みがありました。『気泡管は使用中に温度が上がると圧力が上がりクラックの修復は不可能に近い』と。
確かにそれは実感していました。気泡管の中身は水ですが私は少量のアルコールを混合しています。これはカビなどの発生防止です。これが必要かどうかは判りませんが気を遣ったつもり!
このアルコールも圧力上昇に影響があるかも知れません。

温度が上がっても出来るだけ圧力を上げないためには常温で減圧すればよいのです。そのため少々加温した水溶液を使えばよいことになります。

気泡管を湯煎にして、暖かいまま封止することにします。常温に下がれば圧力も下がる。
ハンダごてを熱源にしました。
接着剤は2液混合型エポキシ接着剤を使いました。
気泡管の固定には当初からの石膏による固定を注射器で水を含ませ緩め再びそれを使い固定しました。調整機能がありますのでここでの精度は要求されません。

封止から3ヶ月、この減圧封止は大成功でした。気泡の大きさは変わりません→気密封止が出来た証です。

定盤の上で180度回転させながら水平点を調整します。

気泡管は鞘管の中に入っています。左右の固定ネジで水平を合わせます。前述の通り定盤自体の水平が怪しいのでそれも合わせ込んで行きます。

上部気泡管の調整が済んだらシリンダメモリをゼロの合わせ下部気泡管を調整します。

水準器は自己校正が出来るとは云え作業台の水平出しも含めて根気の要る作業です。
仕上がってもそんな正確さを必要とするシーンはほとんどありません。タダ遊びの範疇です。

その3 そして2ヶ月が過ぎました。またまたトラブル発生です。

順調に見えた水平器の修理、再びトラブル発生です。

1号機、最初に手がけたモノを仮にそう呼びます。
気泡管の接着が悪く再び狂ってきました。気泡管を固定する接着剤の選択を間違えたため乾燥後の収縮で誤差が発生した模様です。

1号機の再修復
気泡管はしっかり固定され簡単には外れません。カッターなどで接着剤を切り取り外しに成功したかに見えましたが案の定気泡管の封止部分が折れました。
この修復は2号機で経験済み。
・・・結構うまく再修復できたつもりでした。
これを再びフレームに固定します。
木工ボンドやパテがダメなことは学習済み。石膏で固定することにします。
石膏は画材屋さんで売ってることを知り調べると最小単位が500g。使うのは1gほどで充分。
余っても保存が悪ければ固まってしまいます。
良い材料も私たちの工作では簡単に必要なだけ手に入れることが出来るかと云うことも重大な要素です。

石膏に代わるモノ。
石膏の主成分は石灰? 石膏なんて使ったことがありません。中学生の頃美術の時間に石膏で出来た?ギリシャ彫刻みたいなモノを写生したことがあるだけ。
黒板に使うチョークも石膏?、湿気止めに使う乾燥剤は石灰?校庭に線を引いたのも石灰?
これを水に溶いて乾かせば固まる?
よく判らないのですが同じ仲間です。
海苔のカンに入っていたのを一つ開封し実験してみました。
結果は上々。適度に固まり気泡管の固定にはOKサインが出ました。水を掛ければ緩むことも確認。
石灰は水を混ぜると発熱しますが使用するのはとても少量、気にすることもありません。
他に使えそうなものとして黒板で使うチョークとか校庭にラインを引く石灰も使えそう?


石膏の代わりに石灰の乾燥剤を

乾燥剤(吸湿剤)・水を掛けるな、石灰、等の文字があることを確認し袋から出します。出来るだけ細かく砕いて水を加えながら練ります。
石灰が少量ですから水も注射器などで少量ずつ加えましょう。
感触は粘土細工、所定の場所に塗りつけ気泡管を載せ水平確認をしながら固定します。
乾燥収縮は少ないとは云え、多少は狂います。
再調整しながら位置合わせをします。1時間ほど経過すれば完成です。
失敗したら水を掛ければやり直しも簡単です。

翌日になって動作確認をしたのですが何となく気泡の動きが変です。
中心のわずか手前で気泡の動きが止ってしまうことがあります。
トントンと振動を与えればすっと動くのですが!

今回は気泡管の水を交換していますがその封止にはエポキシ接着剤を使っています。
交換した水はアルコール混合水です。正規の気泡管にはどんな水を使っているのでしょう?真水ではカビなどの発生があるかと20%程度のアルコールを入れたのですが。それが悪さして水の粘度が上がってしまったのでしょうか。
同じやり方の2号機を出してみた所、疑問的中。
同じように気泡の動きが悪くなっています。

エポキシ接着剤の溶剤がアルコールに溶けたのでしょうか?
私の使ったエポキシ接着剤は2液混合型で速乾タイプです。

エポキシ樹脂はアルコールには溶けないと思ったのですが硬化前の状態では溶けるかも知れません。
簡単な実験ですが混合前のA剤、B剤にアルコールを掛け混ぜてみました。どうやらA剤は溶けるようです。


箱に書いてあったA剤とB剤、
写真では判りにくいのですがA剤は溶ける。

いずれにしても失敗です。
そしてエポキシ封止をしたモノは再度開封し水を交換するのは不可能に近いです。
気泡管のガラスはとても薄くすぐに割れてしまいます。
1号機の気泡管は特に高精度なモノでもないので諦めることにしました。
ホームセンタで気泡管だけを入手して組み込みました。
気泡管の交換は修行のお陰ずいぶん早くできるようになりました!!


気泡管を入れ替えた1号機
手前は不具合が発生したオリジナル気泡管

2号機はどうする!

これを使うシーンはほとんどありません。チョット使い勝手が悪いですがメインの気泡管は正常ですからガマンできない訳ではありません。
最終的には気泡管を交換するコトとなるかも知れません。

今回は色々勉強できました。
水平器は原理が簡単で自己校正が出来ると云う・その言葉にのせられずいぶん遊べました。
このようなことをすると材料の入手等いろんな壁が現れます。特に材料の少量の入手が壁であり、成功の鍵になることが多いような気がします。

* 気泡管の精度
気泡の位置を確認する線の数が多いほど精度が高いようです。
1メモリで勾配1/100と云うらしいですが勉強不足でよく判りません。

* 注射器
昔は薬局などで入手可能でしたが最近はその使用は厳しく制限してるようですが模型屋さんなどで工作用の簡易型が購入可能です。
接着剤や溶剤など少量をある程度正確に使う場合大変便利です。

* 石膏と石灰
石膏は硫酸カルシウム、石灰は酸化カルシウム。似てるようですが私には細かい性質まで理解できません。
美術教室の彫像が水に濡れたら溶けてしまうかも知りません。
乾燥剤の石灰は水を混ぜると発熱します。その温度は数百度にも達しその量によっては火災の危険もあります。

今回の修復には乾燥剤(石灰)を使用しました。
乾燥剤に水を混ぜて固めたモノは彫像のように硬くはなく触ればすぐに砕けてしまいます。気泡管のような軽いモノの固定ですから問題無さそうです。
数ヶ月後再び後日談を書く羽目になるか無事使用を続けられるか不安と期待が交錯しております。

 

 

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