簡易・消磁器
*AC100vを使用します・電気の安全に対する知識が必要です。

ja1cvf  0909
一部加筆(0909)


磁化されてしまった工具を消磁します。

不注意で磁化されてしまった工具以外に、
ホームセンタなどではわざわざ磁化した物を売ってるようです。
コレが曲者! 困ることがあります。

消磁したいモノを左の穴に差し込み
赤ボタンを押しながら静かに引き出します
それで消磁完了・所要時間10秒

滅多に使うモノではありませんが、ひとつあると便利。
使い方次第で着時も出来ます。

使わない時には縦でも横でも
収納しやすく持ち運び用の
とっても付いてます。

ホームセンタなどでドライバなど購入すると先端が磁石になっているモノがあります。 と云うよりそういうモノがとても多いように思います。
コレはドライバの先にビスなどを吸い付けて作業すると 「狭いところでもうまくビスを付けられるから便利」  と云うことで気の利いた商品らしいのですが困る時もあります。

磁気を消す・消磁する・のは難しいことではありません。
対象物に交流磁界を掛けその磁力を徐々に弱くしていくだけで実用上問題ない程度に磁力を落とすことが出来ます。

【 磁気を消す・消磁するには 】

消磁するには、長い電線をコイル状に巻いて交流を加えればそこに交流磁界が発生します。 それを消磁したいモノに近づけその後、徐々に遠くに離したり電流を少なくしたりするだけで良いのです。
コイルだけでは磁力が弱く消えない時は釘など鉄の棒を入れると良いでしょう。
こんなモノですからわざわざ作ることもないかも知れません。しかしイザ消磁したいと思って材料を揃えるのも意外に大変です。

【 普通のトランス改造です 】

過日、友人の家に行った時“偶然見つけたトランス”戴いてきました。
コレはコアが普通のE-IではなくE-Eのコアを使ってます。


コイルの電圧はP:1次側100V、S:2次側95V・0.5A、32V・0.1Aと云うモノでした。

このトランスのコアを半分外します。コレは漏洩磁束を多くするためです。 端的に言えば磁束の漏れが少ないように作られたトランスをわざわざコアの一部を外し電磁石にしてしまうのです。

コレに交流を加えればもう出来上がりです。
しかしチョットお待ち下さい。
コアを外したトランスはコイルのインダクタンスが極端に減っていますのでそのまま100Vの交流を加えると 大電流が流れあっという間に燃え出します。
幸いこのトランスには95Vという比較的高い電圧の2次コイルがあります。 コレを1次側に直列にします。(32Vのコイルは電流容量が少ないので使いません・開放のまま)
コイルには方向がありますから必ず極性試験をしておきます。(下記参照)

E-Eコアの場合コアを抜き取った時、コイルの空間が出来ますのでコイルの中に消磁対象を差し込むことが出来ます。
作業性がとても良くなります。

1次側を直列にしたので195V(100V+95V)のトランスになったのですがコアを抜いていますので実際には100Vを繋ぐとこれでもかなりの電流が流れます。
測定した結果、このトランスの場合100Vでは約1.8Aの電流が流れます。30秒以上の通電は危険です。1次側は50V以下にすることが望ましいです。
1次側100Vのコイルだけでしたら20V程度しか掛けられないと思います。(コレは経験によるモノですべての場合に適合するかは不明です。)
それでも巻線数が多いので充分実用的な磁力が得られると思います。
*下段【コイルを直列にするための極性試験】を参照下さい

【 電源SWはプッシュON 】

SWは押した時だけ電源が入るプッシュONタイプを使います。押さなければいつも切れてます。 温度上昇で切れるサーモSWを組み込めばさらに安全です。
*今回はサーモSW組み込をしていません。

安全のことをキッチリ考えるなら前述の通り1次電圧を100Vではなくもっと下げるべきです。後段で少し実験してみました。

【 ケースはベニヤ板です 】

放熱には不利ですが小さくっつくる時でも絶縁の問題が楽になります。
四隅に入れた角材にベニヤを張り上下のパネルで固定します。
小さなプラスティックの箱にSWを付け完成です。


このケースはとても放熱が悪いです。
コイルからの発熱も多いので
お勧めできる構造ではありません。

消磁器は使用頻度が高いとは思えません。
連続使用禁止の制限事項を忘れてしまいそうなので、発熱に対する注意書きを貼り付けて置くことをお勧めします。

E-Eコアのトランスは特殊なモノで一般的には入手不可能と思います。
一般的なE-Iコアを使ったヒータトランスでも同様に作ることが出来ます。
 I の方を取り外し2次側は開放のまま使用しません。

 

【 電圧対策 】

電源トランスを利用した消磁器はコアを抜いたためそのままAC100Vを繋ぐと電流が多く流れ発火の危険もあります。。
今回は1次、2次、コイルを直列にしたり工夫して短時間であれば問題ない程度に過電流を抑えています。しかし絶対安全とは言い切れません。
また、今回のように都合の良い2次コイルは滅多にあるモノではありません。
もし、普通のトランスなど利用してこのようなモノを作ってみようと思われる方は充分な電圧対策を検討下さい。

【 スライドトランスを使う 】

もし運良くスライドトランスなどをお持ちなら何も考えずそれで電圧を下げて供給しましょう。
私も、初期実験では電圧を自由に設定できるスライドトランスを使ってテスト及び安全確認をしました。
コレは大変便利ですが大きく、重く、さらに入手が困難かも知れません。(最近はとても高価です)
綺麗なサイン波形のまま電圧をゼロに出来ますから「対象物を電磁石から静かに遠ざける」と云う微妙な動作は不要です。

電圧は固定したままでも良いので24Vくらいのヒータトランスを使って電圧を下げるのも良い方法です。(電圧を切り替えられるタップが多いと便利です。
この方法が一番お勧めです。

【 抵抗を使う 】

トランスは重いので取り扱いが厄介です。
直列に抵抗を入れても電圧を下げられます。しかし、電流が多いのでセメント抵抗のような大きいモノが必要です。
また抵抗の発熱にも注意しなければなりません。
抵抗の代わりに白熱電球を利用するのも便利です。電球を直列に入れるのですが発熱に対し抵抗より工作がしやすいかも知れません。
どの位の抵抗になるかは使用するトランスのインダクタンスが判りませんのである程度実験で決める必要があります。 電球のソケットを直列に仮付けし、電球を差し替えテストします。
電球のワット数が決まれば形の小さい電球に置き換えることも可能です。
いずれにしても大きくなります。

【 コンデンサを使う 】

交流回路で電流制限をする時回路に直列にコンデンサを入れることがあります。
小電力の場合便利なのですがこのように負荷がコイルの場合はうまく行くでしょうか。

コイルと直列に20μFのコンデンサ(AC用・一般の電解コンデンサは使えません)を入れてみました。LCの直列回路なので共振したら大変です。 コイルのインダクタンスが判りませんのでスライドトランスで低い電圧から徐々に上げてみました。 うまく行きそうな感じでした、その状態で回路をONーOFFしてみました。
低い電圧の時はよいのですが定常電圧(100V)では単純にONーOFFするとそのタイミングでアークが飛ぶ時があります。
それだけでなく位相がずれることから波形も悪く「危険なこと」と諦めました。

【 トライアックの利用 】

トランスは重いので取り扱いが厄介です。
電圧を変えるモノではありませんが。負荷電力をコントロールできるトライアックというモノがあります。
電力コントローラとか、調光器と云われるモノがあります。
組み立て実験キットなどもありますから実験には面白いです。

トライアックは交流波形の一部を切り取って通電時間を制御して電力制限します。
コレを使えばスライドトランスと同じように使えるでしょうか。形状は小型で軽量です。
トライアックによる電力制限は交流波形の一部を通電しないように切り取るモノで交流波形が乱れますが充分制御可能です。


波形の一例
交流波形(サイン波)の一部が切り取られている

【 電圧対策の結論 】

電圧調整は今回のようにコイルが負荷の場合はかなり問題有りです。抵抗を使う場合は発熱に注意しましょう。 その他の方法はそれなりの効果があります。
私の場合都合の良いトランスが入手できたのでコイルを直列にしただけでそれ以上のことはしませんでした。
その結果、電流は少し多めですが何もない単純な回路になりました。
SWの切忘れがないように押した時だけONになるSWを使っています。

電流、電圧、抵抗、電力、時間、これらの言葉が混在して書かれていますがお互いに関係し合う要素です。 「オームの法則」を理解していればその繋がりが判ると思います。
電圧対策と書かれていますがトランス改造電磁石の消費電力を制限しようという実験です。

コイルを直列にするための極性試験

私の実験例に従って説明しますが、100V→200V変換トランスなどを利用する場合に対応できます。
ラジオ用のトランスなどでは電流容量の関係で対応出来ません。
*極性試験はコアを抜く前に確認しておきます。

右図の手順に従い確認して下さい。

高い電圧が出るか極性を確認するための操作です。最終的に使用する場合b-d間に電源100Vを加えます。

* 電圧が高いので感電や発火の危険があります。
* トランスのコアを抜くとコイルのインダクタンスが減少してそのまま電源ラインに接続できません。インダクタンスの低下を補う手段です。
* オームの法則、インダクタンスなどの言葉が解らない場合には安易に実験しないで下さい。

スライドトランスなどで1次側電圧を充分下げることが出来ればこのようなコイルの直列接続をする必要はありません。
ただし間違って100V供給しないようにプラグの形状を変えるなどの対策が必要です。

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