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日記 すき きらい

概要 書き物

Marcus Valerius Martialis

Marcus Valerius Martialis

Martialis は古代のローマに生きた、変なおっさんである。
 もちろん、彼にも幼年時代や少年時代があっただろう。しかし、今に残る彼の詩を読んでいてイメージするのは、時代をななめに見た、妙なおっさんでしかない。

彼の詩を読んで驚くのは、それが現代の社会に置き換えても、それほど代わりのない話だからだ。
 ここには、ワイロで肥え太る政治家がいる。
 ここには、持参金をせしめるために、寿命の短かそうな女と結婚する男がいる。
 ここには、クソを食べさせられて、エクスタシーを感じる女がいる。
 ここには、結婚していながら少年の尻ばかり追いかけてる男もいるし、年長の男に言い寄って金品をせしめる少年もいる。
 ここにない現代独特の風俗を探すほうが難しい。

そうしたものを読みふけっていると、あるひとつの感想がわきあがってくる。
 まったく、人間とは、どうしようもない生き物だな〜。

彼はこうした人間のどうしようもなさを書き続け、からかい続けた。
 そして、彼自身はどう生きたのか。
 彼は、皇帝におべっかを使い、ほめそやし、そして何不自由ない地位を手に入れた。
 しかし、それまでだった。結局、彼は、皇帝に見捨てられ、時代に見捨てられ、わびしく死んでいった。

彼はきっと、自分自身の醜さをも同時にあざけっていたのだろう。
 だからこそ、彼の詩はどこまでもえげつなく、また時代を越えて残り続けてきたのだろうと思う。
 とゆ〜ようなフォローが空しいほどに、彼はどーしようもないおっさんである。

しかし、彼の詩はおもしろい。
 現代の社会のろくでもなさに疲れたら、彼の詩を読んでみるとよい。いつの時代に生まれようと、ろくでもなさにはたいして違いがないことがわかる。

彼の詩が教えてくれることは、人間の社会や技術や知識は進歩しても、人間自身の心はそれほど進歩していないってことである。
 そりゃそ〜である。人間は、生まれながらに、歴史をすべて知っているわけではない。いつも、ゼロから出発するからだ。

ということは、もし現代の人間として、人類の文明の上に立って生きたいと思うなら、人類の歴史のなかにある経験や知識や技術を学んでいかなければならない、ということだ。

ということは、人間として、新しい思想や態度や行動を創り出しながら生きていこうとすれば、かつてあった以上に、いまの生を深めていかなければいけない、ということでもある。

ヴィトゲンシュタンが、相続した財産をすべて投げ捨てて生きたように、新しい思想というものは、それを創り出した人間に、風変わりな人生を強要する。
 というよりも、へんなおっさんになってしまった人間が、新しい思想を創り出していく、と言うべきなのかもしれない。

彼の詩は、現代に生きる人間に、大きな教訓を与えてくれる。
 しかし、その教訓はとても苦く、背負うにはあまりにも大きすぎる教訓である。
 へんなおっさんに、なるべきか、ならざるべきか。………。


管理人:神吉 秀典 E-mail:puer@ba.wakwak.com