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日記 すき きらい

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1992 1995

どこまでも行くよ〜

1995年?某月某日 どこまでも行くよ〜

その日、京都の南部で仕事をしていた。家から自転車で1時間ほど走ったところだ。そこで、Excelでクラスター解析を行なうためのマクロを作成していた。とはいえ、マクロの作成そのものは簡単だった。問題だったのは、どういう連鎖を利用するかということと、どのようにして重みをつけるかということだった。統計アプリを作成する人にとってはあまり関係ないことだが、実際にクラスター解析を利用して、研究分析をする人間にとっては、ここが一番大事なところで、これを間違うと何の価値もないデータがずらずら並ぶはめになる。もちろん、クラスター解析なんて、夜店の当て物と同じぐらい怪しいけどさ〜。

そんなわけで、家に帰ろうとしても、頭のなかは、様々な数値と、それをどう関連付け重み付けていくかってことでいっぱいだった。自転車に乗りながら、こーでもない、あーでもないと、いろんな可能性を検討していた。そのうち、いつしかオレの頭は、この世界から離れていった。

やがて30分ほどたった頃、オレはふと我に返った。考えに熱中していたせいで、仕事場を出てからの記憶はかなり曖昧になっていた。前を見ると赤信号である。
(あ〜。赤信号を待って止まっていたのか。)
 オレは安心した。頭は異世界に入り込んでいたが、オレの身体はこの世界で無事に生きて行動を続けていたようだった。

しばらく赤信号を待っているうちに、ふと不安になった。そういえば、自転車って、赤信号でも横にそれたりとかすることが可能だ。なぜ、オレはこの赤信号で止まっているのだろう。いったい、ここはどこの赤信号なのだろう。そんな思いが、急に心の底からわきあがってきた。

あわてて、オレはあたりを見回した。
 がちょ〜〜〜ん。

オレは見たことのない場所にいた。いったい、ここはどこだ。オレは何をしている。
 いいようのない恐怖が、オレの心のなかに満ちた。オレが考え事に熱中してる間に、この世界に何かが起こったのか。もしかして、オレを知っている人は一人もいないような世界にまぎれ込んでしまったのか。ここはトワイライトゾーンなのだろうか。

一瞬、オレはパニックにおちいりかけた。しかし、すぐに冷静さを取り戻した。
(そんなバカなことがあるわけないさ。たぶん、いつもと違う道に入り込んだだけさ〜。)
 そう思って、近くを通りかかっていた人に、話しかけた。
「あの〜、ここはいったいどこですか。」
 その人は、オレの顔をじっと見つめた。そして言った。
「そりゃ、ここは京都やがな。」
 そういう問題じゃな〜〜〜い、と言いたかったが、オレは何も言わなかった。
 笑いをとるために、今がいつの時代か聞いてやろうかな、とも思ったが、思うだけにしておいた。

もはや関西人にまともな話は通用せ〜ん。そう思って、オレは住居表示を探した。
 そして、それを見て、絶句した。

いったいいかなる魔法によるものなのか、オレは家とは反対の方向に30分ほど走った場所にいた。確かに、時間はあってる。ってゆーことは、単に反対向きに走ってただけか〜。てへっ。

そうとわかれば話は簡単である。オレはいそいそと自転車を反対の方向に向けると、家へと帰っていった。そして、1時間半後、オレはやっと家へとたどりついた。

その途中、またもや頭が別次元に飛んでしまい、身体が勝手に赤信号を無視して道を渡っている最中に我に返りやばい状態におちいったりとか、ちょっとした危機が何度かあったが、それはいつものことだから、ここには書かない。

教訓 自転車に乗って、クラスター解析を考えない。どこまでも行きます。


管理人:神吉 秀典 E-mail:puer@ba.wakwak.com