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| 夏の夜の恐怖1 | ![]() | 夏の夜の恐怖2 | ![]() | 夏の夜の恐怖3 |
先日の事件から、1週間が過ぎていた。あれが起こってから、窓を閉ざしたまま生活していた。はっきりいって、うっとおしかったが、再びあれが起こるよりはマシだった。
その夜は、久しぶりに数学基礎論の本を開いて、問題を考えたりしていた。数学の世界にどっぷりと浸かったせいか、こまごまとしたことを忘れられて、とてもリラックスできた。そうして、静かに過していたせいもあるかもしれない。オレは異常な音に気がついた。
最初は、何か妙だ。そう思っただけだった。
心の底で、何かがおかしい。そう言っていた。けれど、別に普通の感覚で変な音がしていたわけではなかった。身体はすでに気づいていたのだろう。ただ、頭では理解できなかっただけだ。オレは、しばらく首をひねったあげく、また問題に戻った。
数分間が過ぎさった。やはり、変なバックグラウンドノイズが聞こえてるような気がする。それも、なんか、どうも変な音なのだ。そして、その異音は閉ざされた窓の向こうから聞こえてくるような気がする。
オレは窓を見つめ、そして考えた。先日の出来事がふと頭をかすめた。果して、窓を開けるべきなのだろうか。オレは迷った。その窓の向こうに、何か恐るべきものが待ち受けている。そんな予感がした。その恐怖に魅せられるかのように、オレはじょじょに窓に近づき、そして、一気にそれを引き開けた。
やはり。窓の外には、先日の怪物がいた。
オレの部屋の窓は、道とは塀でしきられていた。この前は、その塀と建物との隙間に入りこんで、窓から手を伸ばしていたのだった。しかし、今日はその塀の向こうに、肩から上が見えているだけの状態だった。そして、闇夜に浮かぶその首は、口を開くと人間の言葉をしゃべった。
「お話するだけだから、いいでしょ。ねぇ、どうしても話がしたいの。………(以後、略)」
オレがあっけにとられてるのをいいことに、その首は際限なく言葉を吐き出した。
ふと、オレは異常な疲れを感じた。
この世の中、何かが間違ってる。そんな感じがした。
はたして明日は何曜日だったか、そんなことがちょっと気にもなった。
バーゲンを忘れてないか、そんなこともさらに気になった。
もっともっといろんなことを気にかけて、いまの現実を忘れ去ってしまいたかった。
けれど、オレはさっきとは別のことに気づいた。そして、心が一気に凍えた。もしかして…。いや、そんなはずはない。それは何かの間違いだろう。いや〜、そ〜に違いないさ。
思えば思うほど、疑念は心のなかでふくれあがっていった。
ただ話をしてるにしては、身体の揺れは異常だった。そして、心なしか声が震えているような気がする。そして、話に余分な息が入りすぎている。
すべての細部が、ひとつの結論を示唆していた。しかし、それは、オレにはどうあってもたどりつきたくない結論だった。どうやら、神はオレに新たな試練を課せようとしているのかもしれない。これがオレの運命なのか。そう思ったオレは、仕方なく部屋を出た。直接、確かめなければならない。あのまま、好き勝手に跳梁跋扈させておくものか〜。心をしっかりガードしながらも、オレは路上に出た。
なんと〜。その怪物の下半身からは、決して言えない物体が突き出していたのだ。
そして、その物体は、恐ろしい液体をほとばしらせていた。
ひい〜〜〜っ。やっぱり〜〜〜。ううう。見なくていいもん見てしまった〜。
オレが恐怖と怒りがごちゃまぜになった感情を顔に表しながら近づくと、怪物はその物体の先から液体をこぼしながら、そのまま後ずさって、そして逃げていった。なんともはや、こっけいな姿だったが、オレの顔からは一切の笑みは消えていた。
ううう。神さま。ひどすぎますぅ〜。これがオレに対する試練なんすか〜。
オレは怪物の立っていたあたりへ近づくと、あたりを調べた。
オレの部屋の前の塀には、恐ろしい液体がべったりとこびりついていた。ううう。
オレは考えるふりをした。けれど、その間にも、オレの身体は勝手に後ずさっていた。
そしてオレの頭が対策を練っている間、オレの身体は、勝手に部屋に戻り、布団の上に横たわって、すでに寝る体勢を整えていた。そうして横になってみると、すべてが夢だったかのように思えてきた。そうに違いないさ〜。あれはみんななかったことなんだ。そう思いながら、オレは夢の世界へと旅立っていった。
翌日、部屋を出ると、ばったり大家さんに出会った。
「ねぇ、なんか塀のところに変なものが付いてるような気がするんだけどさ。知らない?」
そうたずねられた。オレはにっこり笑って、
「さあ、変なものっていったい何なんですか。」
と答えた。大家さんは、
「知らないんだったらいいんだけどね。あれは犬かなんかかな〜。」
そう呟きながら去っていった。
世の中には、決して触れてはいけないものがある。そして、知らない方がいいこともあるものさ。ふっ。オレは心のなかでそう言いながら、塀とは反対の方を通って出かけた。
こうして。二度目の出来事は幕を閉じた。これがすべての終わりならば…。
しかし、この幕間劇は次にひかえる真の恐怖への序曲に過ぎなかった。そして、最後の恐怖こそ、最低最悪の世にも恐ろしい結末を用意していたのだ。
次回。我が友よ許せ裏切りの夜。シフトJISで書き込み殺すぞっ。
| 続く |