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| 史上最低の作戦5 | ![]() | 転びずき |
蓼食う虫も好き好き、とゆ〜ように、この世にはいろんな嗜好を持った人がいるものだ。かくいう、オレも………、おっとこれは口が裂けても言え〜ん。
とゆ〜風に、誰にでも秘かな趣味とゆ〜ものがある。
外から見ても普通にしか見えないよ〜な人が、人目をはばかる恐ろしい好みを持っていたりすることもあるのだ〜っ。
たいていの場合、そんな人が他人に自分の好みを明かしたりすることはない。まず黙って心のなかに秘めているものだ。
ところが、時には自分の好みについて、高らかに語ってみたい。そんな風に思うことだってある。
この頃、オレは主に有名雑誌で仕事をしていたが、場末のエロ雑誌の仕事なんぞもやっていた。そういった場末の雑誌のひとつに、ビリーという雑誌があった。
この雑誌はもう存在しないと思うが、知る人ぞ知る、変態専門誌であった。
って、こんなジャンルルが存在するのかどーかも知らない。もしかしたら、これ1誌かもしんないけど。
切腹マニアのグラビアが見開きでばーんと掲載され、非常にディープなインタビューがその写真を飾るとゆ〜、毎号、毎号、目が離せない、ってゆ〜か普通の人なら目を離したい、そんな雑誌だった。
ビリーは白夜書房から発行されていたが、オレは白夜書房の他の雑誌にも寄稿していたので、その日は、別の雑誌の原稿を仕上げるため、白夜書房の編集部に居すわっていた。
ようやく原稿も書き上がり、ひと息つきながらまわりを見まわしていると、ビリーの編集の人が近づいてきて、「どうです、これ」といって、オレに写真を見せてくれた。
写真を見たとたん、オレはげんなりした。とゆ〜か、ビリーに使われる写真のほとんどが見ればげんなりするよ〜な写真だった。とわいえ、まず他で目にすることがないよ〜な写真だったことは間違いはない。だから、嫌々ながらも、後学のためにいちおう見せてもらうことは多かった。
見せられた写真は、単に自傷マニアの写真で、そんなにたいしたものではなかった。って、このへんは見すぎたせいで、感覚が鈍くなっていたのかもしれないが…。
自分の身体に針をたくさん突き刺したりとゆ〜、よくあるヤツである。
その写真をぶらぶら眺めていると、横にビリー関係の人達が3人ほど集まってきて、口々に「う〜ん、これはいいねぇ〜」とか、「これは、ありがちじゃない」とか、オレには理解不能な判断基準によって、写真の群れにビシバシと評価を下していった。
その姿を見て、おおっ、プロ、とは感動しなかったさ〜。
うれしそうに変態写真を見ている3人を、ただ、じと目で眺めていただけだった。
それを見ているうちに、オレはふと素朴な疑問を感じた。
「みなさん、そうやって批評してるけど、自分の趣味って一体何なんですか。」
「えっ。オレ。いや〜、まあ、いいじゃないそんなこと。」
「そんな事言わずに。どーせ、ここなら人前じゃなくて、変態前なんだし。そのへんにいる人達だって、みんなスネに3つぐらい傷持ってるよ〜な人ばっかりだし。別に言ってもかまわないじゃないですか〜。」
「いや〜、そう言われてもなあ〜。」
そんな風にしばらく押し問答が続いたあとで、ついにそのなかの1人が口を開いた。
「いや〜、実はね〜、オレは匂いが好きなんだ〜。」
「匂いっていろいろありますけど、どんな匂いが好きなんですか〜。」
「う〜ん。ちょっとね〜。………。まあ、いいか。………。女性のね〜、足の匂いが好きなんだよ〜。特に、上品そうで絶対男なんて近づけないみたいな女の足の匂いとかさ〜。」
「ええっ。」
驚きの声は、オレが発したのではなかった。
その場にいた残り2人の顔が青ざめていた。そして、2人は心なしか後ずさっているよ〜にも見えた。
「えええええええ。」
2人は長〜いリアクションをした後で、2人で顔を見あわせた。そして、互いに言いあった。
「もしかして、お前も〜。」
なんだ、この展開は。
オレは、とても嫌〜〜〜な予感を覚えた。
その嫌な予感どおりに、2人は最初の男のほうを向くと口々に言った。
「いや〜、オレもなんだよ〜。」「いや〜、実はオレも。」
ひぃ〜〜〜っ。や・め・て。
いったい日本全国に女性の足の匂いフェチが何人いるのか知らないけど、よりにもよって、今日この場に3人も集まんなよ〜。
オレは思わず心のなかでさけんだ。
しかし、すごい確率かもしれない。いや、知らない間に3人は引き寄せあっていたのかもしれないが。類友現象ってやつである。そして、互いに自分の趣味を知られまいとしていたのかもしれない。
オレの恐怖をよそに、彼ら3人はもはや止めることができないぐらい盛り上がりに盛り上がってしまっていた。
もはや、オレに残された道は、変態達の宴を聞き続けることだけ。
しかし、ただ黙って聞いているだけでは、おもしろくない。そこで、オレもリアクションをしてみることにしたさ〜。
「女の匂いが好きってのはわかりましたが、いったいどうやってそれをかぐんですか。匂いかがせてくれ〜って言うわけにはいかないだろ〜し。」
「ふふふ。そこはね〜、ちゃ〜んと考えてるよ。」
「考えてるって、いったい………。」
「人ごみ。」
「えっ、人ごみ???」
「そうそう。人ごみに行く。たとえば、お祭りとかイベントとか、そういう所にいくと混雑してるでしょ。ああいう所に行くわけ。で、こける。」
「こける??????」
「うん。これだ、って思う女の人を見つけるでしょ。で、見つけたらそばまでいって、そこでこけるわけ。こけてる間にしっかり匂いをかいでおいて、それを覚えておく。すぐ近くの茂みとかに走っていって、その匂いを覚えてる間に一発ヤるわけ。」
「へぇ〜〜ぇ〜〜ええええ。」
オレはリアクションしたことを、ちょっぴり後悔した。
頭のなかに男が茂みに走っていく姿が、浮んできたからだ。その後も想像してしまったが、ここには書かない。ううっ。
ふ〜、聞かなきゃ良かったかもしれない。
とわいえ、よく考えてみゃ、人畜無害ってゆ〜か、まあ人に迷惑かけてるわけでもないし、ほほえましい話かもしれない。
そんなオレの想いをよそに、彼らはますます話にのめっていった。
「いや〜、この前の○○の祭りは良かった〜。人ごみもけっこうあったし。」
「あれっ、いや〜奇遇ですね〜。実はオレもあそこに行ってましたよ〜。」
「えっ。オレも行ってましたよ〜。」
ふ〜〜〜〜〜〜〜。
この世の中、いったいどうなってんだろ。こんなんでいいものか…。
そのとき、ふとオレの頭に想像が浮かんだ〜。
女性の足もとに転がり込む男。素早く足の匂いをかごうとすると、向こうからも男の顔が…。
「いや〜、さすがっすね〜。ここに目をつけるなんて。」
「そちらこそ〜。ずいぶんご無沙汰ですね〜。」
女性の足を間にはさんで、和気あいあいと交される会話。
今日も日本は平和ですぅ〜。うううううう。
いや〜ん、もうこんな世の中、いや〜〜〜〜〜〜ん。
オレの心のなかの叫びが、彼らに届くことはなかったといいます。
教訓 変態が1人いれば、必ずその近くに2人はいます。くれぐれも気をつけましょう。