*下記文章は、2003年4月に公開したものです。
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『ちあきなおみ VIRTUAL CONCERT 2003 朝日のあたる家』発売に際し |
ちあきさんの復帰を望むたくさんの方々の声は、スタッフのもとに届いていました。熱く復帰を望む声ばかりではなく、スタッフへのお叱りという形をとる場合も含めて。同時に声としてではなく、多くの方々が抱かれている無言の想いもひしひしと伝わって来ていました。 しかし、それに応えることが出来ないもどかしさや無念さは、スタッフ自身が誰よりも強く感じていた訳です。ファンの人々にも負けない情熱はありながら答えを出せない忸怩(じくじ)たる想いがあったようです。かくいう私はレコード会社を辞し、九州・福岡に暮らしておりますが同様の思いで居りました。皆、何も手をこまねいていたわけではなく、静かな努力は続いていたのです。 既にさまざまな所でインフォメーションされており、御存知だとは思いますが、「ちあきなおみ VIRTUAL CONCERT 2003 朝日のあたる家」というCDが4月23日にテイチクからリリースされることを御報告します。 昨年の秋、朗報が飛び込んできました。何とこれまでにリリースされたことが無い楽曲、5曲のコンサートでのライヴ・テープが発見されたというのです。新しく発見されたちあきさんの作品をより良いものにすべく、関わりが深い旧スタッフまでが寄せ集められました。幸運なことに、私もその中の一人だったという次第です。先頭には30年以上に渡ってちあきなおみに関わり、熟知され、精神的な支えの役割りを続けてこられた方が立ち、テイチクのスタッフ、私、それにデザインまでも含めて、かつての盟友たちが集合したのです。 興奮を抑えながらスタジオで試聴した時の喜びはひとしおでした。リリース可能な音質であり、何よりも「朝日のあたる家」(ジ・アニマルズ 訳詞:浅川マキ)が含まれていたからです。コンサートで歌い、過去に数度TVでも歌ったことから皆様方の間で幻の熱唱として語り継がれてきた曲です。 残りの「ラ・ボエーム」(シャルル・アズナブール 訳詞:なかにし礼)「アコーディオン弾き」(エディット・ピアフ 訳詞:美輪明宏)「酒と泪と男と女」(作詞・作曲・歌 河島英五)「ダンチョネ節」(日本民謡)にも、ちあきなおみらしい表現が詰まった歌が満ち満ちていました。 新しい5曲のライヴ感を活かすにはどうした企画が良いのかという話し合いが重ねられました。そして全員の隠された願いが糸口を開きました。もしちあきさんが2003年にコンサートを開いたとしたら、どういうものになるのだろうか。それぞれが心の中に思い出のシーンを浮かべていました。 VIRTUALではあるものの2003年のコンサートが始まったのです。残念ながら関東エリアでしか行なわれなかった最後のツアーを軸に、選曲、構成がされていきました。実際のコンサートの中、2コーラスで歌われたものはその形を踏襲しました。その分、たっぷりと1曲目の「百花繚乱」から19曲目の「伝わりますか」まで78分間、ちあきなおみの歌が詰まっているはずです。 全曲のマスタリングは、ジャズやヴォーカルの第一人者であるエンジニア・別宮環(べっくたまき)氏。このサイトの方々でしたら、フランク永井や青江三奈のビクター編『RE-MASTER VOICE』の美しいサウンド作りで御記憶の方もいらっしゃるのではないでしょうか。 全ての楽曲がクリアーで、まさしく現在のサウンドに生まれ変わっています。そして何よりも、ヴォーカルの手触り感が伝わってくるものになっているのが喜んでいただけると思います。 可能であれば、リアル・タイムでのライヴをお届けしたい気持ちは山々です。それが叶わない今、私たちはVIRTUAL CONCERTという形でこの10年という時間を埋め、2003年のちあきなおみを皆様と共有できれば幸いです。 録音機材の進歩と関わったスタッフの情熱、そして何よりもファンの方々が寄せてくださった深い愛情が、過去のライヴではない新しく未来へと繋がる可能性を秘めたこのアルバムを作ってくれたものと信じます。 |
佐々友成 |