矢切の渡し
別れの一本杉

1982年10月21日発売
(EP)AH-268



1976年にコロムビアから発売されたシングル「酒場川」のB面曲だった「矢切りの渡し」は、1982年頃から大人気となった梅沢富美男を擁する大衆演劇の<梅沢武生劇団>の舞踊演目に含まれ、好評を得ていました。さらに彼が出演したテレビドラマ『淋しいのはお前だけじゃない』の挿入歌にも使用され、次第に有線リクエストが殺到。それを受け「矢切の渡し」とタイトルを改めて急遽A面曲として再発売されました。

しかし、当時ちあきさんはビクターに移籍しており、外国の楽曲を日本語でカバーする活動を展開。発表から6年を経て意外な形でこの曲が注目され、ヒットの兆しを見せた事にちあきさんは戸惑ったそうです。
結局、コロムビアに所属する細川たかしが1983年2月に同曲をシングル曲として発売。それに伴い同じコロムビアから発売されていたちあきさん盤はシングルチャート上昇中の最中、突然廃盤になりました。ファンからすれば残念な話ですが、ちあきさんはその措置を内心喜んでいたのだとか。
その後各レコード会社がこぞってこの曲をリリース。空前の競作ブームのきっかけを作る事にもなったのです。

シングルレコードの売り上げでは細川たかしが事務所の力も相まって(ちあきさん盤廃盤は、その事務所が圧力をかけたため、との報道も当時ありましたが真相はいかに?)他を圧倒しましたが、有線でのリクエストは、2005年11月に放送されたNHK『歌伝説 ちあきなおみの世界』でも紹介されたとおり、ちあきさん盤がチャート1位を独走しました。
また、シングル盤が買えなくなってしまったため、同曲が収録されたカセットテープの『ベスト2000』というベスト盤がチャートを上昇(最高位は17位、8万本近い売り上げを記録)するという珍しい現象が起きました。

この歌をちあきさんがテレビで歌ったのは4度。
1982年12月放送のちあきさん出演のドラママ『ちょっと噂の女たち 黒田軟骨の女難(ただし、劇中歌としてちあきさん演じる小料理屋の女将が歌う設定)』、1989年3月7日放送のNHK『歌謡パレード’89(フルコーラス)』、同年3月12日放送のテレビ東京『演歌の花道』、同年10月6日放送のABC『情け歌(フルコーラス)』です。

近年のちあきさん再評価に伴い、ちあきさんの「矢切の渡し」は密かに、静かに、しかし確実に広まっていっています。