冬の暖気運転 環境問題に対する関心が高まったのか,このところ「暖気運転は必要なのか」という質問を受けることが多い.確かに暖気運転中に吐き出す二酸化炭素は全くの無駄.かといって暖気運転をしないとエンジンの寿命を短くするような気もする.では最善の策は? 結論から書いてしまうと暖気運転は不要だ.暖気運転の意味は二つに分けられる.まずは「エンジン各部にオイルを行き渡らせる」というものだ.エンジンが止まるとオイルも下がってしまい,この状態でエンジンを回せば金属同志が擦れて磨耗してしまう.しかし,エンジン始動後,十秒もあればオイルが行き渡る.従って十秒間だけ待てばOKだ. 二つめは文字通りエンジンを暖めることだ.昔のエンジンはガソリンと空気の混合が大ざっぱなキャブレター方式だったこともあり,暖まらないとブスブスいってキチンと走れなかった.しかし,今や大半のエンジンは電子燃料噴射システム.始動直後から安定したパワーを発生する.これまた暖気運転など要らない.つまりエンジン始動時,十秒間だけ待てばいいということになる. ただし,冷え切った状態のまま,普段通り走るのは問題がある.エンジンの内部はさまざまな材質の金属で構成されており,暖まるとそれぞれ膨張して形状変化してしまう.エンジンは膨張した状態で正常に回るようになっているから,それまでは無理な走りはしない方がいい.さらにミッションや駆動系の暖気運転も必要.これまた徐々に暖めていかねばならないのだ. 延々と排ガスをバラまき,エンジンだけ暖まったからと元気よく走り出す人を見掛けるけれど,ミッションや駆動系は冷え切ったまま.これではエンジンだけ長持ちしても,そのほかが壊れてしまうので,正しい暖気運転とは言えない.エンジンも,それ以外も,少しずつ暖めていかなければならないのである.お勧めする暖気運転は1.エンジン始動後十秒くらい待ち,エンジンの回転数が少し下がったらギアを入れる 2.駆動系にオイルを行き渡らせるために,500mくらい時速20km/h以下でゆっくり流す 3.水温計が動き出すまでは時速40km/h以下を保つ 4.水温計が動き出したら普通の運転に切り替える−という方法だ. ちなみに規定の温度に達するまでは触媒が機能せず,大量の汚い排ガスをまき散らす.間違っても子どもなどに吸わせないように.最近はリモコン式のエンジンスターターを使う人も見掛けるが,環境と近所に迷惑をかけるだけ.自分勝手の“極致”みたいなものだ.ほんの少し寒い(夏場は暑さ)のを我慢すればいいだけなので,できるだけ使用は自粛したい. これでOKカーライフ 国沢光宏 中日新聞99.2.21 |
Webmasterの独り言:僕は朝出勤時,十秒間も暖機しません.すぐ走り出します.もちろんゆっくりですが.リモコンエンジンスターターもトヨタをはじめ,大メーカーがオプション設定しているっていうのもどうなんでしょう.排ガスは自殺にも使われるくらいに殺傷能力があるわけで(密室という状況下ではありますが),今話題のダイオキシン以上に身近にある危険物質ですぞ. |