Tバック 〜勝負する父親〜
父(内村)
娘(ベッキー)
○娘の部屋・たぶん朝
床に座り、ローテーブルに置いた鏡に向かって髪をとかしている娘。
ドアが開き、父親が入ってくる。
父 「のりこ、入るぞ」
娘 「なに」
父、床に座り、おもむろに、
父 「Tバックを貸してくれ」
娘 「は?」
父 「Tバックを貸してくれ」
娘 「何言ってんの」
父 「だから、うしろがTの字の形をしてね、タテの部分がややケツにくい込みがちのパンティーがあるだろ、あれを貸してくれ」
娘 「いや、知ってるわよそんなことは」
父 「だったら早く貸してくれ」
娘 「なんで貸さなきゃいけないのよ!?」
父 「今日は父さん、会社で大事な商談があるんだ」
娘 「なんで商談だとTバックが必要なわけ?」
父 「商談中に、おしりのラインをきれいに見せたいからに決まってるでしょう」
娘 「はあ?」
父 「大事な商談中に、パンツのラインが浮き出ていたら、まとまるものもまとまらないだろう。だから早く貸してくれ」
娘 「絶対イヤ」
父 「今日の商談をだいなしにする気か。今日という日は、父さんにとってのプロジェクトXなんだぞ。だから早くTバックを貸しなさい」
娘 「イヤよ、そんなに欲しいんだったら外で買ってくればいいでしょ」
父 「じゃあなにか、外で父さんがTバック買ってるところを、近所の人に見つかってもいいって言うのか。お前の友達に、なに、のりこの父さんってTバックマニアなの?きしょい!とか、陰口たたかれても平気なの」
娘 「それは…」
父 「どうなんですか」
娘 「…困る」
父 「でしょ。だから、お前のTバックを貸しなさい。はい、早く」
娘 「ん〜〜(ものすごく嫌そう)」
娘、しぶしぶ立ち上がり、ドレッサーの引き出しからTバックを一枚取り出して父に手渡す。
娘 「はい」
父 「…なんでベージュなんだ」
娘 「?」
父 「なんでベージュなんですか。今日、思い切って父さん、はこうとしてるのに、ベージュとはなんですか」
娘 「色なんて関係ないじゃん!」
父 「だってこれはお前の勝負パンツじゃないでしょう。ベージュじゃないでしょう。これじゃ父さんも勝負できないよ!」
娘 「(キレる)勝手にしてよ、バカ!」
父 「バカではない(妙に冷静)」
娘、怒って部屋を出ていく。
父 「のりこ! のりこ! …探させてもらうぞ」
父、引き出しを開けて中を覗きこむ。
父 「お」
Tバックを一枚取り出して、
父 「(娘の出ていったドアのほうに向かい)パープルか? お前の勝負の時はパープルか?」
(2002.1.27
O.A.)