大家族の離婚 〜父側? 母側?〜


父 (原田)
母 (名倉)
息子1・高校生 (堀内)
娘1・高校生 (ベッキー)
息子2・中学生 (南原)
息子3・小学生 (子役)
息子4・幼児 (子役)
娘2・幼児 (子役)
おじいちゃん (内村)



○居間

 荷物があらかた片付けられたリビングダイニング。ちゃぶ台を囲んで家族会議の8人。
 画面左端から、息子3・息子2・父・息子4・娘2・母・娘1・息子1、
 そして一歩引いた後ろ中央で椅子に腰かけているおじいちゃん。


父 「キヨミとカズヤはお母さん、サブロウとメグミは俺が引き取る
母 「待って。メグミは幼稚園の送り迎えがあるから、私が引き取るわ
父 「そんなのなんとかなるよ
母 「お願い。私に引き取らせて
父 「(息子2・3に)どうする
娘1 「ジャンケンで決めるしかないんじゃない
父 「(娘1に)バカかお前は。ジャンケンで決められるか!
母 「じゃ、本人に聞いてみましょう。メグミ、パパとママどっちが好き?
娘2 「ママ
母 「メグミ〜!(娘2を抱きしめる)」
父 「…じゃあしょうがない。メグミはお前が引き取れ
おじいちゃん 「わしはどっちじゃ?
父 「(おじいちゃんを無視して)そのかわり、ユウジとシロウは俺が引き取るからな
おじいちゃん 「なあ、わしはどっちじゃ?
母 「(おじいちゃんを無視して、息子2・3・4に)離婚しても二度と会えないわけじゃないから、元気出しなさい
おじいちゃん 「わしは?
娘1 「ねえ、ビデオデッキは?
父 「俺だ
母 「何言ってんの、プレステがそっちならビデオはこっちよ
おじいちゃん 「わしは…
父 「(息子2・3・4に)プレステとビデオ、どっちがいい
息子2・3・4 「プレステ!
母 「じゃあ、ビデオは持ってくわ
父 「他にないな
おじいちゃん 「わし…
母 「自転車は?
父 「自転車は二台あるから、一台ずつでいいじゃないか
母 「そうね
父 「ああ。これで全部だな
おじいちゃん 「おい!おい、わしは?(母と目が合ったのでここぞと勢い込んで)わし!
母 「…金魚がまだだったわ(と、下から金魚鉢を出す)」
おじいちゃん 「こらーっ!いいかげんにしろーっ!金魚の前に、わしの行き先決めんかい!
母 「(うんざり)わかりましたよ。(息子1・娘1・2に)じゃあ聞くわよ。金魚とおじいちゃん、どっちが好き?
息子1・娘1・2 「(即答)金魚!
おじいちゃん 「エ〜〜
父 「(息子2・3・4に)お前たちは
息子2・3・4 「(間髪いれず)金魚!
おじいちゃん 「ウソ〜〜
父 「困ったな、金魚は一匹しかいないからな
母 「何言ってんのよ、あんたがおじいちゃん引き取りなさいよ。もともとあんたのお父さんでしょ
父 「何、今さら血縁関係のこと言ってんだよ、関係ないだろ
息子2 「そうだ、血は関係ないだろ
父 「そうだよ、金魚は家族も同然なんだよ
おじいちゃん 「(泣くに泣けない)」
母 「今まで金魚の世話してきたのは私なんです。金魚は私が引き取ります
父 「金魚を一番最初に買ったのは俺だよ
娘1 「待ってよ、金魚はおじいちゃんと違ってまだまだ大きくなるのよ
おじいちゃん 「(声も出ない)」
父 「だから俺だって。(娘1に)お前は口はさむんじゃないよ、バカ野郎!
母 「私が引き取りますから
父 「だめだっつうの
母 「私が引き取るから!
父 「俺が引き取るんだよ!(…と、言い合いながら父と母、金魚鉢を取り合い)」
おじいちゃん 「…ひいぃ〜〜!

 おじいちゃん、やおら割って入り、金魚を飲み込んでしまう。
 一堂、絶句。娘2は泣き出す。

おじいちゃん 「これで、どうじゃあ!
父 「…しょうがない。金魚は新しいのを買うか
母 「(娘2をなだめつつ)そうね。もっとかわいい金魚を買ってあげるからね。行きましょ
父 「行こう

 両親と子供たち、とっとと去ってしまう。

おじいちゃん 「なんじゃ、なんじゃお前たち?こら、こら!

 おじいちゃん一人ぼっち。
 悲しみの人間ポンプで金魚を腹から出し、鉢にもどす。

おじいちゃん 「(金魚に)一緒に住もう…



(2002.6.30 O.A.)