intelもいつのまにかおかしくなった - その1


 さてさて、先週までは、MS及びMSKKを集中的にこき下ろしてきました(だって、実際、非難されて当然のことをやってやがるからね。まだ全然書き足りないです。)が、そろそろ、Wintel陣営のもう一方のヤクザ企業、そう、あのintelのことも、ここで取り上げない訳にはいきますまい。そうでないと、MSとのバランスを欠くというものです(笑)。

 ところで、私、プロフィールのほうにも現時点ではまだ書いてませんでしたが、職場での私の(現在の)仕事内容は、エンジンECU(電子制御ユニット)関係の、ソフトウェア開発だったりします。一言で言えば、自動車のエンジン周りの制御を受け持つソフトウェアのことです。従って、仕事上の専門分野から言っても、MSのような「パソコンソフト」関係よりも、intelのような「CPU(プロセッサ)周り」のチップ関係の話のほうが、実は得意だったりします。何故かと言うと、エンジン(に限らないけども)制御系のソフトウェアというのは、処理速度的に、そのプロセッサの能力の極限まで要求される場合が多い為に、そのシステムで使用するプロセッサについて、非常に詳しく知っておかなければ、仕事になりませんので、必然的に、プロセッサ・ユニットに係る知識と経験は、豊富になるからです。あ、そうそう、自動車のエンジン関係である以上、(人命にもろに関わりますから)ECUのソフト開発では、設計フェーズでは勿論のこと、製造フェーズや試験(単体デバッグ/実機デバッグ)フェーズでも、とことん、あらゆるパターンを考えて徹底的に見直しを行ってるってこと を、言っておきますね>MS(笑)

 さて、以上のことを踏まえて、CPU周りの評論家(笑)としての私が、以下のことをハッキリ申し上げます。

 1.intelのチップは、アーキテクチャの限界を、トランジスタの数の多さでカバーしているだけ

 2.故に、やたらと回路が複雑になり、信じがたいエラッタ(ハードウェア・バグ)が見つかる

ということです。

 1.については、もはや言わずもがなですね。CISCアーキテクチャの限界(注*1)は、恐らくintel自身が一番よく分かっていると想像しますが、それでも、1976年(20年以上前ですよ!)発表の8086プロセッサとの上位互換性を維持しなければ、アッと言う間にマーケットを失ってしまうのが明らかだから、PentiumIIの今の時代になっても、相変わらずCISCアーキテクチャでいかなければならないところが、intelの辛いところです。intelは、最近の自社CPUを、「内部的にはRISC風の命令に変換して実行速度を上げて...」云々と宣伝してますが、一種のまやかしです。チップが新しくなるたびに処理速度が(それなりに)上がっている(ように見える)のは、チップの発熱問題を省みず、殆ど無理矢理クロックアップを実現してるのと、一次キャッシュを沢山内蔵するようにしたのが与って大きいのであって、「RISC風命令」云々はほぼ関係ありません。あれは、「おおっ、CISCにRISC的技術を吸収するなんて、やっぱりintelは世界最高の技術水準のプロセッサ・メーカーなんだなぁ」と思わせるためだけの、イメージ戦略です。実態は、いわゆる「チカラワザ」でカ バーしてるだけなんです。

(注*1)コンピュータの心臓部であるマイクロ・プロセッサの内部構成は、CISC(複雑命令セット)とRISC(縮小命令セット)との2種類のアーキテクチャに大別されます。このうち、世の中で「パソコン」と呼ばれているコンピュータ以外のコンピュータは、(家庭用ゲーム専用機すら)今では殆どがRISCアーキテクチャを採用しています。その理由の詳細はここでは述べませんが、要するに、処理速度の面、信頼性の面から、RISCのほうが優れていると、評価されているからです。

 そして、その結果が、2.になる訳ですね。以前(確か1994年)見つかった、初期のPentiumの浮動小数点演算ユニットのバグにしろ、昨年後半に見つかった、Pentium/MMX Pentiumの俗に言う「F0(エフ・ゼロ)バグ」にしろ、結局のところ、回路(特に命令解析回路でしょう)がやたらと複雑になってしまったのが、最大の原因であると、私は思ってます。ただまあ、回路が複雑なのは理解できるけど、世界最大の(最高のとは言いません(^^;;)CPU製造メーカーとしては、「動作検証試験で手抜きをしている」と言われても、しょうがないんじゃないかな。個人的な話をすると、エンジンECUのCPUに採用されている、某社のCPUなんかは、プロトタイプの段階でも、徹底的に動作検証試験をやってるって、そこのエンジニアのかたは言ってましたよ。(本来これが当たり前。)比較するに、intelのチップなんて、出荷品レベルであんな変なエラッタが見つかるようじゃ、少なくとも制御系では、怖くてとても使えません。(実際、制御系で8086系チップを使ってるって話は聞いたことないですけど(^^;;)
 で、ここからが最大の問題点なんですが、かつての浮動小数点演算ユニットのバグにしろ、今回の「F0バグ」にしろ、intelは、自らは上記の事実を公表しなかった、という点です。つまり、いずれのバグ(エラッタ)も、第三者(=パソコンユーザー)に発見され、インターネット上で公表されてから、初めてintelもバグを認めた、という流れになっている点です。こんなの、本来、設計/製造した企業の責任として、自ら公表すべきもの。(ユーザーがCPU取り替えを要求するかしないかは、別次元の問題。)自動車メーカーなんかは、欠陥が分かれば、それを公表し、リコールに応じますよ。それが、他者に指摘されるまでは、知らんぷりで通そうとするintelの考え方が、既に腐ってますわな。え?自動車と違ってパソコンのCPU如きは人命には関係ないから良いって?いやいや、今時は、パソコンも、かなりクリティカルな仕事に使ってる例、よくありますよ。例えば、病院で、病室の温度管理に使ってる例だってありますよ。こういう例では、人命に関わってないとは言えないでしょ。「所詮パソコンだから大した目的には使ってないはず。だから、一般ユーザーからのリコール要求には応え ません」なんて言い分は、昔はともかく、もう今となっては、通りません。

 ところが、今回の「F0バグ」の件に関して、intelは、各ハードウェア・メーカーに対し、「『F0バグ』は、特定の不当命令でしか表面化せず、一般のアプリケーションを実行している限り起きない現象だから、CPU取り替え要求には応じる必要はない。しかも、このバグは、PentiumProやPentiumIIでは起きないから、CPU取り替えを要求してくるユーザーには、『PentiumIIマシンに買い換えろ』と言え」などと言って、脅しをかけているそうです。(これは、複数のパソコン・メーカーの社員のかたから聞きましたので、確実な情報です。)ふざけた話です。以前の浮動小数点バグのときもそうでしたが、intelは、「我々は、エンド・ユーザーのシステムに対し直接責任はない。(エンド・ユーザーに対して責任があるのは、出荷しているパソコン・メーカーだ)」と考えている(注*2)としか思えません。無責任も甚だしい。何せ、今回の「F0バグ」は、「OSに関係なく、システムをクラッシュさせることが可能」という、クラッカーにとっては涎が出るような楽しい話ですからね。かなり深刻なバグと言わざるを得ません。にも拘わら ず、この傲慢さ。

(注*2)考えてみると、MSも、まさにそうですね(笑)。全く、intelといいMSといい、設計/製造者としての責任なんぞどこへやら、最終的な責任は各パソコン・メーカーへ丸ごと押し付けだもんなぁ。それで商売やってけるんだから、まさに独占企業だけの特権だね。でもね、こんなふざけた「我が世の春」は、長くは続かないよ>Wintel

 全く、intelも、MSとの付き合いが長いから(かどうかは知らんが)、見事なまでに根性腐ってきましたな。結局、今の私たちが見せられてるのは、(これからも何度も書くことになるでしょうが)「独占が生じた分野では、健全な市場経済活動は期待できない」という、ごく当たり前の法則です。CPUというパソコン・ハードウェアの心臓部を牛耳るintel、OSというパソコン・ソフトウェアの基本部分を押さえるMS、共に今の時点では有力なライバルがいない(いてもあらゆる汚い手を使って潰しにかかりますしね。資本主義である以上、資金の豊富な者が有利ですし。)ために、本当、やりたい放題です。しかし、読者の皆さん、ご安心下さい。(←いきなり観客を意識した口調(笑))まず、MSは既に崩壊しかかってますし、あそこは、落ちていくときは、坂道を転がるどころか、ガケから真っ逆さまにフリー・フォールで落ちていくでしょう。そういう下地のある企業ですから。そして、intelにしても、まだMSほど嫌われてないかも知れませんが、盟友MSが地に堕ちれば、必然的に急降下で堕ちていくに違いありません。そうなって以降が、パソコン業界では、本当の意味での、 健全な競争のスタートになるでしょう。今のWintel独占状況は、到底正常な状態と呼べるものではありません。

 まあ、他にも、「intel inside」ロゴの使用に関する、メーカーへの強要の仕方とか、(少し昔ですが)i486プロセッサのPentiumコアのプロセッサへのアップグレードの約束を(ごく一部を除いて)反古にした件とか、intelについても、MS同様、(メーカーに対してもユーザーに対しても)相当アコギなことをやってきた事実は、色々あるんですが、今回はここまでとしておきます。またの機会があれば、「intelもいつのまにかおかしくなった - その2」(←本当に書くんだろうか?)として、また取り上げます。