Windows98の実態


 おおっ、こっちはまた、凄く久しぶりの更新です。前回から、半年空いてますね。パソコン業界にネタがなかったから更新しなかった訳では勿論なく、単に私の手抜きです。(苦笑)まあ、実際は本業が忙しくて、ってのが理由ですけど。こう書くと、「不況で仕事のないご時世に、忙しくてかなわん、なんて、幸せなことじゃないすか」って言われそう(実際、周囲の人には言われてます)ですが、忙しさも、程度とバランスの問題でしてね。「そこそこ忙しい」状態が継続するなら、そんなに問題でもないんですが、ここ半年ほどは、「死ぬほど忙しい」のと「やることない」の両極端だったから、肉体・精神両面で疲労がたまるんですね。(←これは単なる愚痴ですので、聞き流して下さい(失笑))
 さて、そんな私事はともかくとして、今年パソコン業界関連で最大の出来事と言えば、(日本では既に2ヶ月ほど前の話ですが)勿論、Windows98の発売ですね。これは、コンピュータ業界に身を置いている者にとっては、私のようなアンチMS人間であろうがなかろうが、「我関せず」という訳にいかない出来事なんですね。何せ、PCのOS、それもOS/2やPC UNIXといったマイナーOS(注*1)でなく、PCのOSシェアの90%以上を占めているとも言われる、*天下の*MSの出しているOSの3年ぶりのバージョン・アップですから、黙っててもある程度は世間の注目を集めないはずはありません。それに加えて、この不況下、パソコンのハード/ソフトの買い替え需要を掘り起こそうとすれば、こういうOSのバージョン・アップは、メーカーにとって数少ないチャンスですから、パソコン雑誌も巻き込んで、いわば業界ぐるみで、大々的に「Windows98待望論」をキャンペーンしてました(少なくとも、私にはそう映った)から、Windows98は、かなりの期待をもって(と言ってもユーザーよりも主に業界の期待(^_^;;)登場してきた訳です。
 さて、そんな業界主導とはいえ、ともかく期待を背負って登場してきたWindows98ですが、その実態(実体)は、どんなもんなんでしょう?そこが、多分一般ユーザーの最も知りたいところではないでしょうか。実際、私の友人・知人にも、今年7月〜8月頃が多かったんですが、「今度出る(または出た)Windows98って、どこが良いの?Windows95からバージョン・アップしたほうが良いの?」てな質問を、結構されました。いや、質問ならまだマシなんですが、「Windows98にアップグレードしようと思うんだけど、手伝ってくれない?」てな依頼も少なからずありましたね。他のパターンとしては、「今度こそ(=Windows98マシンの出た今こそ)、パソコン買ったほうが良いかな?」てのも。(←これは勿論、まだパソコンを所有してない人の場合。)

 こういった質問または依頼に対して、私が、技術屋として終始一貫して答えてきたのは、「Windows98にはまだアップグレードしないほうが良い。」「新品のWindows98マシンより、ほんの少し前のWindows95マシンを買ったほうが良い。」などなど。つまりは、Windows98はやめとけ、と言っていた(今でも言っている)訳です。その理由は、私がアンチMSだから、ではなく(それを言ったらあと書くことないよ(苦笑))、きちんとした技術的理由があります。(と言うか、本当は逆で、理由があるからアンチMSなんですが。(^_^;;)その理由とは、「Windows98はWindows95と比べて一部API(注*2)が勝手に変更されていて、95で動いていたソフトが98ではおかしな挙動をする場合があるし、最悪ならシステムがとぶ可能性がある」からです。これは、MSを貶める為のガセネタでも何でもありません。れっきとした事実です。

 そもそも、この「Windows95で問題なく動いていたアプリケーション・ソフトの挙動が、おかしくなる」という現象は、MSがネットスケープ潰しの為にタダで(注*3)ばらまいていた(今もばらまいている)、インターネット・エクスプローラ(以下IEと記す)のバージョンが、4.0以上になった頃から、騒がれていることです。そして、世の中には優秀なハッカーがいるもので(特に米国には)、調べてみたら、IE4.0xをインストールすると、Windowsが使っている重要なシステム・ファイルの一部を勝手に上書きする上、それらのプログラムのAPIが、変わってしまう、という事実を突き止めたんですね。(ほんと、凄いエネルギーですね。私なんか、例えデバッガがあっても、そこまで突き止める体力と気力がありませんよ(苦笑))

 で、この「IE4.0xの問題と、Windows98と、どう関係あるの?」と言うと、
   Windows98 = Windows95 + IE4.0x
に他ならないからです(注*4)。故に、IE4.0xを入れて起きるトラブルは、必ずWindows98でも起きる、と断言できるんです。だ・か・ら、私は「早急にWindows98にする必要はない。いや、少なくとも今はしちゃいけない。」と、友人・知人に言ってきたんです。Windows95にIE4.0xを入れた状態、またはWindows98のルック&フィール(←死語か?)は、(アクティブ・デスクトップを見たことのある人は大抵思うでしょうが)確かに、何となく格好良くなった感じがしますが、だからと言って、見た目の格好良さと引き替えに、システム挙動の安定性・安全性を失ってしまったのでは、話になりません。本末転倒です。考えてみると、ベースになっているWindows95も元々安定してません(爆笑)が、しかし、Windows95用に作られたアプリケーションは、不安定なOS上でも、何とかそれなりに安定して動こうと頑張っています。それに対し、Windows98は、それらアプリケーションが使っているAPIを変更してしまっているのだから、不安定になるのが当り前で、特におかしくならなかったら、逆にラッキーというべき。つまり、「Windows98完全対応」を謳った( 注*5)アプリケーションがまだ出揃わない現状では、同じようにアプリまたはOSが落ちるにしても、「Windows95が落ちるのは事故(=偶然)、Windows98が落ちるのは故意(=必然)」と極論してしまって構わないのです。
 まあ、私ごときがどうこう言うまでもなく、Windows98が如何に危ないものとして扱われているかは、例えば、朝日新聞が全社的に「IE4.0x禁止令、Windows98禁止令」を敷いている事実(注*6)とか、エプソンが「Windows98禁止。違反したマシンはネットワークから締め出す。」という方針を採用している事実とか、トヨタ系の殆どの企業では上記に加え、「MS-Office97以降禁止(=文書作りはOffice95でやれ)。」としている事実など、実例をいちいち挙げていたら、とてもここで書き切れません。これら大企業が、社内ネットワークのクライアント・マシンとしてWindows98(またはWindows95+IE4.0x)を使わない理由は、まさに、先に挙げた「OS内部でAPIが変更されている」事実を、把握しているからです。

 しかるに、一般個人ユーザーに、そういった(企業ユーザーは大抵知っている)重要な情報が知らされないのは、日本のパソコン雑誌(企業向けの雑誌を除く)は、ことごとく、ユーザーのほうではなく、メーカーのほう、特にMSのほうを向いた誌面づくりをしているからです。大広告主であるマイクロソフトを怒らせてしまうと、あとあと大変だからにほかなりません。こういった、ユーザー(消費者)をないがしろにしたパソコン雑誌は、本来なら、資本主義の原則に則り、消費者の選別によって淘汰されていかねばならないのですが、残念ながら、日本ではまだまだ情報開示が進んでおらず、結果としてユーザーは「依らしむべし、知らしむべからず」状態におかれ、メーカー側からはいいカモにされているのが、実状です。しかしながら、インターネットの急速な普及により、海外のパソコン誌の記事内容も、簡単にブラウズできるような時代になりましたし、中には日本語訳を公開してくれるところもあります。(CNETとかZDNetとか。。)そういったサイトに上がっている情報は、一般ユーザ ーにとっては、(国産の、MSの提灯持ち記事のオンパレードの雑誌を読むよりは、はるかに)頼もしい情報源になりますし、もうそろそろ、日本のPCユーザーも、いいカモから脱却して、もう少し賢くなっていいんじゃないでしょうか。自分がカモられないようにする為には、自分が勉強するしかありません。(或いは、お金に糸目をつけなくて済む人なら、お金を出して、人に自分を守ってもらうって手があります(笑)。それもまた資本主義の姿です。)
(注*1)OS/2やPC UNIX(LinuxとかFreeBSDとか、有料ソフトだがSolaris for x86も当然PC UNIXと言えます)を、マイナーOSと言ってしまうと、それらのOSのサポーターから怒られそうですね。実際、私もOS/2使ってますしね。ただ、ここで言っている「マイナー」とは、OSの出来のことではなく、市場でのシェア(それも現時点に限る)のことを言っています。余談ですが、将来的には、PC UNIXの系列、特にLinuxが、MSの独占状態の今のOS市場に、かなり勢力を拡大してくるであろう、と私は予想しています。OS/2?これはまあ、今とシェア余り変わらないでしょうね。(苦笑)
(注*2)アプリケーション・プログラミング・インターフェースの略。プログラムを呼び出す際の、変数(パラメータ)の型とか並びとかのことと考えて下さい。例えば、2点、(x,y)=(10,4)と(18,7)を結ぶ直線を描くとすると、(x,y)の組合せがパラメータとなる訳ですが、このx軸座標とy軸座標の並びを、勝手に逆にされてしまったらどうなるか?当然、期待するような答は返ってきませんね。(←これはあくまで例えです。)OS側で、こういった勝手な変更をされては、OSのAPIを使って組んでいるソフトウェアは、挙動が怪しくなって当然です。
(注*3)ネットスケープも、今年の春から、Netscape Communicatorを無料化しましたので、今はInternet Explorerと、無料ソフトという点では同じになっています。
(注*4)それを言えば、Windows95 = Windows90(=Windows3.0?) + 5 という、痛烈な皮肉もありましたねぇ。(爆笑)
(注*5)しかし、これって、かつてWindows3.0が出た時も、Windows3.1が出た時も、Windows95が出た時も同じでしたが、「過去のソフト資産もほぼ完全に動きます。(=ほぼ完全に上位互換OSです)」というMSの売り文句とは裏腹に、実際にはアプリケーション・ソフトもバージョン・アップしないと、動かない場合が非常に多いですね。結局のところ、MSの言う「互換」って、何を基準にしてるんですかね。(今回のWindows98になって動かないのは、APIの変更という確信犯的犯罪行為によるものなので、論外ですが。)一説には「う互換」の事だとも(爆笑)
(注*6)朝日新聞といえば、系列の「ASAHIパソコン」誌では、IE 4.0xの大特集をやったり、Windows98を賛美しまくったりしてた訳ですが、そうやってユーザーを煽っておきながら、自分達は恐くてWindows98を使わないなんてね。日本のPCユーザーが、如何にナメられてるか、って証拠の一つでしょうね。