セルシオ vs BMW740i
BMW740iとトヨタ・セルシオ.日本における車両価格の差は326〜470万円に達するから,同列に比較するのはナンセンス,と思うかもしれない.けれどもドイツ本国での740iの価格は10万5500DM.これに加えるに,5速ATや電子制御ダンパーをはじめ,日本仕様では標準で備わるエクイップメント類の総額は1万5000DM以上,というところだ.
いっぽうセルシオの方は,旧型がベースで10万3350DM.新型はさらに値上がりして11万9000DMとなる.けっこう高い値付けをしているのである.(途中略)
セルシオも,旧型に比べればかなりの進歩をみせた.とくにAピラーが乗員の上体から離れて,圧迫感が消えた.また旧型は前方の車両感覚がつかみにくかった.これはダッシュ〜前ドア部の上縁部が連続曲線になっているためもあるのだが,今回はその造形をやめて前部車体の立体感をイメージしやすくなった.とはいえ7シリーズやSクラスとはまだ差がある.またダッシュの立体造形や質感も廉価車的に淡泊,かつ量感が不足気味だ.(略)
走りはじめて最初に強い印象を与えるのは,相変わらずセルシオのほうだ.とにかく静かであり,車体の揺れも柔らかく感じるからだ.これは旧型譲り.
しかし走行音,とくにエンジンが動いている音と軽いバイブレーションなどは,きちんと伝わるようになった.
同じことは,ステアリングインフォメーションを軸とする路面感覚についてもいえる.走行音と路面感覚を過剰に遮断したことで,旧型は乗っていて飽きるクルマ,移動の実感に欠け,時として危ないクルマになってしまった.それに対する反省はかなり大きかったようだ.(略)
パワーパッケージに関しては,じわりと踏み込むのに応じて,後輪が車体を押し出す自然な動き,という点で,セルシオの特性がはっきりと感じ取れ,上質な走りの実体化へ,一歩近づいた印象はある.エンジン本体の質感,燃焼のさわつきなども旧型より相当に改善されている.
しかしもう少し広いゾーンで,デリカシーをもってクルマを味わうと,エンジンを中高回転域まで元気よく引っ張った時のビートの滑らかさやトルクの伸び,トランスミッションの変速の切れ味など,740Iの質感の高さに軍配を上げざるをえない要素は多い.それが渾然一体となって,ドライバーの官能に訴えかけてくるのである.(以下略)
                 
モーターファン別冊「BMW740iのすべて」から
webmasterの独り言:まあ「740iのすべて」という雑誌ですから,セルシオの方がいいなんて書けないですよね.

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